台湾を拠点に活動する美術家・胡宮ゆきなさんの個展が那覇文化芸術劇場で開かれている。昨年、胡宮さんや親族は、3年前に93歳で亡くなった祖母・外間キクさんが楽しみにしていた「カジマヤー」を催し、在りし日を偲(しの)んだ。個展はその祝いを再現した
▼キクさんは16歳で沖縄戦を体験した。大正琴が趣味で、沖縄の歌や踊りを好んだ。幼少期、祖母の家で過ごしたという胡宮さんは「戦争を生き延びたからか、気力にあふれ太陽のような人だった」と懐かしむ
▼胡宮さんの話を聞き、祖母の存在は孫の心のより所だと感じた。絵本や小説にも精神的な支えとして祖父母を描く作品がある。絵本「モチモチの木」(斎藤隆介作、滝平二郎絵)もその一つ
▼闇夜(やみよ)が怖い臆病な豆太が主人公。夜中に体調を崩した祖父を助けるため勇気を出して山を下り、医者を連れてくるという話。「やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、きっとやるもんだ」。祖父は成長した豆太をぎゅっと抱きしめる
▼敬老の日を含め21日まで老人週間。祖父母と話す機会を持てたらいい。その言葉や姿勢が若い世代の道しるべとなるだろう。