宿泊客のチェックインが相次ぐ時間帯だった。石川県七尾市の和倉温泉を震度6強が襲った。1月1日午後4時過ぎ。元日とあって全体で2千人を超える宿泊予定者がいたという
▼宿泊施設は災害で避難先にもなるが、施設に被害が発生したらどうするか。能登半島地震は、想定外の課題も浮上させた。「流動人口対策」だ。住居とは別の場所に滞在する宿泊客らへの対応が、地元の防災対策から抜け落ちていることが多い
▼和倉温泉旅館協同組合の谷﨑裕理事長に先週、現地で聞いた。発災後には急きょ宿泊客は地元の公民館や体育館へ誘導した。8カ月を過ぎ、観光地の今後の課題は「水などの備蓄や避難施設の増設、避難道路の整備」という
▼和倉温泉は海沿いに旅館が多く立ち並ぶ。旅館協同組合に加盟する21施設のうち営業を再開できたのは3施設のみ。護岸の損壊が復旧への道を阻む。この経験を「災害に強い観光まちづくりにつなげる」と誓う
▼海沿いに宿泊施設が多い沖縄も観光危機管理の対策を講じるが、避難インフラの整備は参考になる。自然災害では思わぬことが起きる。和倉温泉が伝える教訓だ。