大相撲の中村部屋新設で移籍した十両の嘉陽、幕下の宮城が9月場所で力強く白星を重ねている。嘉陽は十両二場所目で初の勝ち越しを決めた。突き押しだけでない身の軽さも持ち味だ
▼角界では珍しい朝稽古前の朝食導入による1日3食、稽古の午前・午後2部制。中村親方(元関脇嘉風)が掲げる「攻防のある相撲」の風を受け、独自性も尊重されながら若手が育っている
▼そして初入幕からやがて1年、31歳の小兵・美ノ海。本場所は自身最高位の前頭七枚目で臨む。序盤は得意のまわしにこだわらず攻防のある突き押しで勝ち進んだが、中盤で疲れたか失速。それでも7勝で勝ち越しに王手を懸ける
▼初土俵から8年半で302勝276敗1休。300勝達成にも「気付かなかった」と話した。相撲一家に生まれ、幕内に上り詰めながら、ひょうひょうとした語り口は相撲と距離を置いているかのよう。既に「美ノ海節」の味わいだ
▼地味に徹する一方、土俵入りでひときわ目立つ体にしたたる汗は「努力の人」を物語る。その姿に毎夕しびれ、生き方にあこがれ、こちらも力をもらう。郷土の誇る自慢の力士だ。