日本復帰後から今までの沖縄の音楽シーンをまとめた「オキナワミュージックカンブリア」(ボーダーインク)が8月、発刊された。FM沖縄が復帰50年の節目に放送した同名の特別番組を元とし、追加取材も加えて本に再構成した。復帰前後の喜納昌吉のデビューから2020年のHOMEのデビューまで、沖縄の音楽シーンの流れを読み解くことができる。
特別番組は2022年5月15日、9月4日、2023年3月26日にFM沖縄で放送された。番組には、同局の人気番組「ポップンロール・ステーション」のディレクターを長年務めた東風平朝成さん、音楽番組の立ち上げなどに関わった「ゴールデンアワー」ディレクターでパーソナリティーの西向幸三さん、「レディオダブ」ディレクターの伊是名優子さんが出演した。アーティストへのインタビューを紹介しながら、おのおの視点で沖縄の音楽シーンを振り返った。
当初1回きりの予定だったが2時間で語り尽くせず、「CoccoとKiroro編」「沖縄ポップス編」の2本を追加で制作し、放送した。
書籍化はライターの長嶺陽子さんが提案し、担当した。書籍では5時間ほどある放送内容を時系列に再構成。沖縄ポップスの先駆けが生まれ、ロックやフォークも興隆した1970年代、本土化の影響なのか盛り上がりが鳴りを潜めた80年代、沖縄の面白さが再認識され始めた90年代。長嶺さんは「時代と音楽がリンクしていることが面白い」と振り返る。
番組タイトルの「カンブリア」は、モンゴル800、HYなど、全国的なヒットを飛ばすバンドが次々登場した90年代後半から2000年代の音楽シーンを指す。西向さんは「多様なジャンルで大爆発していた」と評する。その様子を生物の種類や数が爆発的に増えた「カンブリア紀」になぞらえた。当時の爆発的なムーブメントについて西向さんは「民謡や古典などをやる人たちが当たり前にいて、アメリカ文化との融合が土着としてある。そこからつながっている」と見る。
沖縄音楽の発展に、音楽を広く届けてきたラジオの存在は欠かせない。長嶺さんは「現場を見てきたディレクターの視点による(沖縄の音楽シーンの)アーカイブになる」と話す。西向さんには、沖縄の音楽界を支えてきた歴史を後輩につなぎたいとの思いもある。「若いラジオ制作者にもぜひ読んでほしい」と呼びかけた。
(田吹遥子)
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沖縄発のバンドが全国的にヒットし、多様なジャンルで興隆した「カンブリア紀」について聞いた西向幸三さんへのインタビュー全文はこちら。