<金口木舌>疑似的な政権交代


<金口木舌>疑似的な政権交代
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 警察担当の記者をしていた頃、飲酒運転を疑似体験できるゴーグルをかけたことがある。目の前がゆがんで見え、平衡感覚がおかしくなった。だが、あくまで疑似体験。すぐに慣れた

▼目下、注目を集める自民党総裁選は疑似的な政権交代と言われる。政権が危機的状況になると、与党内で別の派閥などが代わりの首相を輩出し、新たな政権を誕生させてきた

▼発足以降、旧統一教会との関係や派閥の裏金事件など問題を抱えた岸田内閣は退陣を余儀なくされ、党の新たな顔選びが始まった。那覇市内で開かれた総裁選の演説会には、1700人超が来場。注目度はピカイチだ

▼基地問題などで激論が交わされるのかと思いきや、過去最多の9人が出馬したこともあって、演説会は1人10分間のスピーチのみ。基地や沖縄振興に関する政策も現政権を踏襲するようで、既視感が漂う

▼私たちは党総裁をすげ替えることによる疑似的な政権交代を当然視していないか。与野党が入れ替わる本当の政権交代も過去にはあったが、苦い記憶が伴う。次はどうするかを決めるのは有権者の意思一つ。その機会は年内にもやってくる。