毎日の買い物で果菜類を手にする時、わずかな形や色の違いが気になる。味は変わらないはずなのに。生産者側の均一で売れる商品作りにとらわれ過ぎているようだ
▼農家の負担を軽減するため農業の工業化が進み、生産性は向上した。病害虫を防ぐ農薬や化学肥料の活用で農産物の質は均一化し、安定した出荷が家庭の食を支える。一方で近年は有機農業への関心も高まっている
▼農薬も肥料も使わない農業を実現した「奇跡のリンゴ」で知られる青森県の木村秋則さんは、山の中で育つドングリの木が「周りの自然に生かされている」ことに気づかされた。害虫や病気の攻撃にさらされながら元気に育つ。自然の営みで土が豊かになる
▼負担軽減を目指した近代農政は曲がり角にあるのかも。農薬や肥料が高コストを招いているという。国は化学肥料の軽減など環境に配慮した「特別栽培農産物」制度を設けた。均一化の一歩先を行く作物が生まれそう
▼沖縄でもウチナー野菜の栽培マニュアルができた。農法を変えるきっかけになりそうだ。彩り豊かな農産物に目移りする実りの季節。秋分の日に農業の明日を考える。