<金口木舌>藍染作家の挑戦


<金口木舌>藍染作家の挑戦
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 泥藍に木灰汁、泡盛などを加え、ゆっくりと発酵を促す。化学原料を入れずにリュウキュウアイの染料を作る行程は手間がかかる。気温、湿度を感じ発酵時間の調整も必要。自然との調和なくして職人の技は成り立たない

▼本部町伊豆味の工房「オキナワブルース商店」で藍染めに打ち込む真栄城興和さん(42)。山あいの静かな工房で、祖父の代から技術を受け継いだ藍染めに向き合う

▼伊豆味で育ち、千葉県内の大学へ進学後に始めたサーフィンで全国を回った。波に乗るうちに、美しい海の青さを表現したいとの思いが募った。卒業後に沖縄へ戻り、染色の世界へ飛び込んだ

▼転機は突然やってきた。30代で先天性の病気で下半身が不随となり、車いす生活となった。「へこんでいる場合じゃない」。家族や友人の支えで前を向いた。沖縄独特の柄を生かし、サーフィンで見た景色を染色で表現する

▼16日開催の日本パラサーフィン選手権にも出場した。もう一度、自分の足で歩くことが最大の目標だ。全身の筋力を使うトレーニング、ストレッチを続ける。自然と調和し、ゆっくりと、前へ。真栄城さんの挑戦は続く。