米大統領選の争点の一つに人工妊娠中絶の是非がある。米国では約50年前に「中絶は憲法上の女性の権利」とされたが、連邦最高裁判所がその判断を覆した2022年以降、中絶を禁止する州が増えている
▼ミズーリ州もその一つ。同州が中絶を認めていた頃、専門の医療機関を見学した。中絶は本人の意思なのか、妊婦単独でカウンセリングする体制が印象的だった
▼日本では母体保護法の規定で中絶には原則、配偶者の同意が要る。1996年、旧優生保護法から母体保護法に改称した際、障がい者への不妊手術強制の差別的条文は削られたが、中絶などの要件は変わらない。女性の不妊手術も原則禁止のまま
▼生殖能力のある体への違和感から不妊手術を望んでも法律に阻まれる。この法規定は「自己決定権を定めた憲法に違反する」として20~30代の女性5人が訴えを起こした。「自分の体のことは自分で決めたい」という思いがある
▼大統領選と同じ11月、ミズーリを含む9州で中絶の是非を問う住民投票がある。自ら道を選ぶ女性が尊重される社会とは何か。日本の現状を考えつつ投票の行方を見守っている。