76年前の10月1日、本紙の前身「うるま新報」に「待望の豚到着」という記事が載った。その4日前、戦争で荒廃した沖縄に向けて米ハワイ州の県系人らが送った豚が着いた
▼機雷が残る海域を避けながら、米西海岸から約5千キロの航海。記事によると、送られた豚550頭のうち15頭は航海中に死んだという。農家らに割り当てられた豚は4年後には10万頭に増えた
▼戦後の養豚の礎となった出来事は、ミュージカルや本になり広く知られる。米ハワイ州は、豚が沖縄に到着した9月27日を「PIGS FROM THE SEA(海を渡った豚たち)」に定めた
▼名護博物館で「みんなで学ぶウチナーウヮー(沖縄の豚)」という勉強会が8月から開かれている。主催するのは名護市で「島豚七輪焼 満味」を開く満名匠吾さん
▼「飲食店と学ぶ、沖縄・琉球の豚食文化」が副題。「豚を知ると沖縄が見えてくる。歴史や食文化を掘り下げ、命と向き合うことが大切」と語る。手間をかけず利益のみを追う現代の食文化への問いかけでもある。紡いできた豚食文化から暮らしを見つめ直す機会に、という思いが伝わる。