<金口木舌>力の湧いてくる言葉


<金口木舌>力の湧いてくる言葉
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 コロナ禍の中にあった2020年6月、那覇市の松島小学校、松島中学校が校舎の窓などに「みなさんはわたしたちのヒーロー」「医療従事者に拍手を」と大書した横断幕を掲げた。那覇市立病院で働く医療従事者らへの感謝を込めたエールだった

▼当時、この病院に入院していた当方は、治療に追われる看護師らから「力が湧いてくる」「うれしい」との声を聞いた。感謝の言葉が医療従事者を力づける

▼逆の事例もある。混んでいる診療所に予約なしで駆け込み、受診を強要する人を見かけた。対応した職員は丁寧に断るが、30分近く受付から離れない。周りの目にはどう映っただろう

▼那覇市医師会の調査によると、医療現場で患者による暴言や威嚇、脅迫といったカスタマーハラスメントを直近2年間で経験した人が55%に上るという。医師らは「出勤が憂鬱(ゆううつ)」「心身に不調」「仕事に集中できない」と答えている

▼医療関係者と患者は共に治療が進むことを求めているのに、時に思いがすれ違い、衝突する。やはり不断の対話は欠かせない。処方箋となるのは、お互いの心が和む「力が湧いてくる」言葉だろうか。