【宜野座】白塗りの顔に乱れた髪―。宜野座村松田ののどかな風景に時折「落ち武者」が現れ、村内やネット上でひそかな話題になっている。その正体は松田区出身の女性たち。仕事や育児真っ盛りの彼女らが落ち武者に変身し、村民の前に現れるのは「日常生活にささやかな笑いを提供したい」との思いがある。
始まりは昨年10月。結婚し、松田区の伝統行事八月あしびに参加できなくなった新里菜乃さん(26)が「また白塗りをしたい」と思い立ったことがきっかけ。ハロウィーンとも重なり、子どもたちに驚いてもらおうと、落ち武者になることを企画した。村内外から同級生を中心に集まり、10人が落ち武者に。時間のあるメンバーで子どものいる同級生の家を回って、踊りを披露した。
不気味な外見に反し、明るく切れのある踊り。観客は落ち武者を気に入り、「次は家に来て」と声が掛かるようになった。民家で開いた公演では庭の縁側を舞台に仕立て、近所の住民ら30人が集まった。その様子を動画投稿サイトに投稿すると話題を呼び「落ち武者を探しに来た」と、村を訪ねる人もいたという。
「自分も楽しくて相手も楽しんでもらえる。あれもやってみようと好奇心が出て、人生に張りが出た」と目を輝かせるのは、比嘉亜弓さん(27)。仕事とはまた別のやりがいを感じている。那覇市でアイドル活動をする南絵茉さんは「自分以外の自分になれることが楽しい」と話す。
新里さんは「『落ち』武者だから、これからは上がるしかないという意味を込めた。見て元気になってもらえれば」と白塗り顔でにこり。
落ち武者メンバーのうち、新里さんら3人は、25日に開かれる宜野座村まつりのにーびち余興大会にも出演する。
(田吹遥子)