米軍海外展開に縮小論 米、財政難で強まる


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【米ワシントン8日=島袋良太本紙特派員】財政削減問題に直面する米国で、米軍の海外駐留を縮小すべきだとの意見がにわかに強まっている。オバマ政権は「アジア太平洋重視」との戦略を掲げているが、国防予算成立に大きな権限を持つカール・レビン上院軍事委員長は3月下旬に「私はその方向へはシフトしない」と明言した上で「沖縄から兵力を削減し、本国へ戻すべきだ」と述べるなど、戦略の根本部分でも異論を唱えている。

 イラク、アフガニスタン両戦争が財政を圧迫し、オバマ政権は国家予算の3割弱を占める国防費の削減を重視している。
 3月に発動した歳出強制削減に伴い、国防費は今後10年で5千億ドル(約50兆円)の削減を迫られている。国防総省の年間予算は約60兆円。単純計算で毎年約1割の歳出削減が10年続くことになる。
 ヘーゲル国防長官は今月3日の講演で「軍事力は米国に今後も必要不可欠だ」と強調。だが米中枢同時テロを例に軍事力に頼った抑止の「限界」にも言及し、政治や経済、文化面からの安全保障政策も必要だとして米軍の「縮小路線」も鮮明にした。
 3月4日付の米紙ニューヨーク・タイムズに論文を寄せた歴史学者のエリザベス・ホフマン・サンディエゴ州立大教授は財政難や冷戦終結を挙げ、日本やドイツから米軍を撤退すべきと主張。両国は自国を守る防衛力が十分あると指摘し「財政を逼迫(ひっぱく)させず、安全保障の負担を分けよう」と訴えた。軍事覇権と表裏一体で自由経済や経済的権益を守る政策からの転換も提起し、国際秩序の維持は国連などに委ねるべきだとした。
 一方、米軍の海外展開への疑問が強まる中、海兵隊は危機感を強めている。ヘーゲル氏は3月、歳出削減に伴う戦略見直しを指示したが、海兵隊で見直しを担当するマッケンジー少将は「前線配備やローテーション配備を駆使して最善の領域で作戦を遂行する。われわれは今すぐ動ける部隊だ」と存在意義を強調。陸軍との違いも強調し、不要論をけん制している。
 オバマ大統領が10日に2014年度予算の大枠を示す予算教書を発表し、議会などで国防戦略や予算をめぐる議論が展開される。