<金口木舌>子どもにカメラを向けたら


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 「好きなものはコンピューター」「お金があったらおばあちゃん連れて世界一周」。日本と中国に住む子ども100人の日常を写真とコメントで紹介する企画展が先日、東京であった

 ▼笑顔でカメラを見詰める子、生真面目に唇を引き結ぶ子。さまざまな表情の現代っ子が映し出されている。上海、北京、福岡と4都市で開催された
 ▼東京展の実行委員長になった渡辺満子さんは元テレビ局プロデューサーで、1972年に日中国交正常化を果たした時の外務大臣、大平正芳氏(後の首相)の孫だ。北京へ向かう祖父を見送った時は10歳だった
 ▼日中関係がぎくしゃくしている。「41年の間、両国が仲良くするためのメンテナンスをしてこなかった。日中関係は制度疲労を起こしている」と渡辺さんは話す
 ▼41年たって隔たりが広がっているのは沖縄と日本政府も同じではないか。同じ年に復帰して一つの国となったはずなのに、オスプレイ配備や普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画に、県民からは「構造的差別」の声が渦巻く
 ▼本土のどこも受け入れない米軍基地を沖縄に負わせ、振興策という金で反対を封じるという手法も“制度疲労”を起こしている。将来、沖縄の子ども100人にカメラを向けた時、すがすがしい笑顔が見たい。構造的差別を着実に解消する知恵は、大人に求められている。