沖縄三越再生 大胆かつ柔軟な発想に期待


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 地域経済活性化支援機構は、9月に閉店する沖縄三越の事業再生支援を決定した。

 支援機構とリウボウホールディングスが出資し、10月から社名を「リウボウ商事」に変更して沖縄三越の事業を引き継ぐ。
 閉店する沖縄三越は、労働局や県と連携して閉店に伴う離職者の再就職先確保に全力を尽くしてほしい。沖縄三越の事業を引き継ぐリウボウ商事は、大胆かつ柔軟な発想で事業再生に取り組み、国際通りの活性化に寄与してもらいたい。
 沖縄三越は7月末までに直接雇用する従業員の約3割、本店へ入居しているテナント従業員の約2割の再雇用先を確保したが、雇用確保が必要な人の4分の3に当たる360人余の再雇用先は決まっていない。経済団体や大手企業にも協力要請して全従業員の雇用確保に努めなければならない。
 百貨店事業は各地で苦戦を強いられている。沖縄三越はバブル末期の1991年、約65億円を投じて店舗増床・増築を実施した。しかし、那覇市小禄や新都心に大型スーパーなどが相次いで開業し顧客獲得競争が激化した。次第に三越の客足は鈍り、売り上げは伸び悩んだ。2004年から再生計画に着手したが、多額の負債を背負う中で、内向きに我慢を続ける戦略には限界があった。
 一方、デパートリウボウを運営するリウボウインダストリー(糸数剛一社長)は、明確に「若者」に照準を当て、客層の拡大を図る。地下食品売り場を改装し「沖縄のデパ地下」を目指している。タワーレコードなど若者向けの仕掛けも用意する。沖縄三越の戦略とは対照的だった。
 今回沖縄三越の事業を継承するリウボウ商事は、リニューアルする沖縄三越跡で「沖縄にないもの」(糸数社長)をコンセプトに掲げる。吉本興業の常設劇場や、自分だけのオリジナル菓子が作れる体験型の菓子販売店舗、沖縄初進出のレストランなどが入居する予定だ。
 国際通りは戦後の焼け跡から復興した沖縄の象徴的場所だ。県民が買い物に訪れる街から、現在は観光客であふれる街に変遷した。国際通りを活性化するには沖縄三越跡の再生は欠かせない。空港から近く、多くの観光客が足を運ぶ利点を生かし、地元客にも観光客にも受け入れられる新たな空間づくりに期待したい。