<社説>賠償未払い 卑屈な対米追従の表れだ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米兵の犯罪者は、証拠を隠滅したり口裏合わせをしたりできる。それを可能にしているのが日米地位協定だが、その特権的で不平等な協定すら米国は守っていない。

 在日米軍基地の騒音被害で住民への損害賠償が確定した13の判決をめぐり、日米地位協定で定めた賠償金分担を米側が拒否し、日本側が全額肩代わりしたままであることが分かった。
 政府は「米側と調整がついていない」と説明する。だがこの問題は2004年に発覚した。優に10年を経過したのに、いまだに支払わせられない日本政府の何と弱腰なことか。卑屈なまでの対米追従がここにも表れている。
 日米地位協定18条5項eは米軍による行為で日本政府以外の第三者に与えた損害の賠償金分担を定める。米国のみに責任がある場合は米側が75%、日本側25%。日米双方に責任がある場合は折半することになっている。
 13の爆音訴訟は嘉手納、普天間両基地など米軍専用基地が11件、自衛隊と米軍が共同使用する小松基地が2件だ。賠償金は計約169億円。共同使用の小松基地分は折半だとしても、米軍専用基地の賠償金は米側が75%負担するのが筋だ。すると米側の未払い総額は110億円を優に超える。
 日本政府は交渉内容を明らかにしていないが、1996年の横田基地訴訟の口上書で米軍は「判決の当事者は原告と日本政府だけだ」と述べている。つまり、分担の割合を問題にしているのではなく、支払う理由がないと主張しているのだ。だから1円も払っていないはずである。
 だが、政府は米側に是が非でも支払わせるべきだ。夜間や未明などの爆音で賠償金支払いが発生するとなれば、米軍は不要な深夜の離着陸を控えることになろう。つまり爆音予防につながるのだ。
 爆音訴訟は、法が許す範囲を超える爆音で住民に被害を与えたという論理だ。米側は、日米地位協定の第3条「排他的管理権」に基づいて基地を運用しているのに、なぜ訓練が違法なのかと言いたいのだろう。
 それなら、米軍のほしいままな振る舞いを許しているその排他的管理権そのものが問題だ。日本の国内なのだから日本の法を順守せよ、と排他的管理権撤廃を求めるのが、主権国家のやるべきことのはずだ。地位協定を改定すべきなのはその意味でも当然なのである。