<金口木舌>体験にみる地域の魅力


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 普段よく見掛けるものの、実はよく知らないものも多い。地域資源もその一つ。その良さを深く知るための「大人向けの職場学習」が過日あり、秋のやんばるを巡った

 ▼企画はやんばる畑人(はるさー)プロジェクト。「食で始まる活性化」を合言葉に農家や加工業者などでつくるグループだ。「香祭(かばーさい)」と銘打ち、取引先の飲食店やホテルのシェフらが生産現場を散策した
 ▼羽地地区の水田では琉球王朝時代から稲作が続く。かんがい施設の整備に苦労を重ね、安定栽培ができるようになった。説明に聞き入る参加者の表情には、羽地米を“紡ぐ”地域力が新たな刺激になったことが見て取れた
 ▼スパイスに使われる香辛料が実る山畑では、たわわなこしょうの木に関心が集まった。「これだけの量は塩漬けされた状態でしか見たことがない」。料理人らの目はくぎ付けだった
 ▼星空の下での夕食会。アバサー汁にはやんばるスパイスや屋我地の塩が使われ、韓国料理のチゲに似た味わいを堪能した。みそも羽地米で仕込み、調味料一つ一つに込められたこだわりが体に染み入った
 ▼実際に見て気付く体験を通し、シェフらにもアイデア料理が浮かんだよう。秋の夜長、食材だけでなく、味付けの中にやんばるの恵みを活用する可能性が広がった。仕掛けや工夫で、プロの好奇心を呼び起こせることを実感した。地域の宝の輝かせ方はいくらでもある。