蓮の花のように力強くまっすぐ— 本村ひろみの時代のアイコン(14) 坂本希和子さん(沖縄県立芸術大学大学院 工芸専修2年)

  • 沖縄県全体
このエントリーをはてなブックマークに追加



切れ長の目に勢いのある筆の線で描かれた漆黒のアイライン。たおやかな表情で研究室に迎えてくれた希和子さんの眼差しに釘付けになった。「こんな鮮やかな一本の線を描くのは容易ではない」と感じていた私に、彼女は「負けず嫌いの精神でここまで頑張ってきた」という話をしてくれた。明るく凛とした雰囲気の彼女の話すエピソードはとても興味深いものだった。

幼少期の体験

ブレのない線が描ける筋肉と整った呼吸は、幼いころ妹さんと通った空手の鍛錬の賜物に違いない。当時空手の練習よりも絵を描きたかった希和子さんは猛特訓のすえ、小学生の空手大会で「西日本一位」になり、空手をやめて絵の道に進んだ。目標に向かう真っ直ぐな意志は才能といえる。


『Lotation』

高知県出身の希和子さんは母親が石垣島出身。子供の頃、古民家に住む祖父母を訪ねては、目にする鮮やかな色彩に強烈な影響を受けていた。石垣島の祖父は社会科の先生。県外から遊びにきた孫に島の歴史や行事を教え、豊年祭では綱引きを体験させてくれた。そのおかげで島に息づく豊かな伝統を学ぶことができた。

高知県に住む父方の祖父母は美術の先生だった。実家の2階は油絵と書をする祖父母のアトリエ。「思えば感性を養うのに恵まれた環境でした」と振り返る。


『祥ひらく』

「作品を生みだす」という作業に家族は理解を示しずっと応援してくれた。そんな家族の温かい思いは、彼女の伸びやかな作風に反映されている。

「紅型」「染め」を始めたのは大学に入ってから。工芸学部の1年から2年の時に、染色実験で色の見本帳を作り、紅型の模写をする。



沖縄の空気をまとう

希和子さんは古い紅型を学ぶうち「うちくい」という飾り風呂敷の存在を知る。琉球王国時代には中国の印鑑などを包んだりした風呂敷。その用途も「包む」「敷く」「掛ける」「被る」と様々な使い方がされ、デザインも草花や吉祥なつるかめ松竹梅など豊かな模様が描かれている。


『蓮文様紅型風呂敷-ゆめにさく-』

その模様を描く「筒描き」は、フリーハンドで勢いよく線を描いていく作業。「大胆で自由」な線。これは彼女の得意とするところだ。そして「繊細」な型染め。現在彼女はその2種類の技法を融合するという今までになかった斬新な発想で表現の世界を広げている。

作品「ハレに舞う」(2016年制作 素材 シルク・顔料 技法 型染め・糊防染め)は華やかに「うちくい」が舞う図柄。


『ハレに舞う』

同作品の紹介に彼女はこう記している。「紺地、浅地、黄色地のうちくいが舞い、旋回する模様がうちくいのシルエットを飛び出し広がる事でハレの日の賑々しさを表現した」と。学部の卒業式にその振り袖を纏った彼女は初々しく、作家としての一歩を歩み始めた。


自らデザイン制作した振り袖をまとう坂本さん。

2015年.石垣の曾祖母が100才で他界した。その時に受けたインスピレーション「ハレ・ケ(生と死)」。
「生きること」へのエネルギーと曾祖母への想いを込めて制作した振り袖「君が居る世界の証に(2017)」は、彼女が惹かれる色彩、黄色と青を地に、蓮の花が大胆にデザインされている。


『君が居る世界の証に』

蓮の花は彼女の作品に描かれる花のなかでも象徴的なモチーフだ。彼女は作品の紹介文に「沖縄の空気は寂しさや悲しさを全て包み込み、明るくて大きな力を持って渦巻いていると感じた。筒描きという技法は通常、うちくい(飾り風呂敷)や舞台幕に使用されるが、その線の力強さを私は身に纏いたいと思い、振袖を制作した」と記している。

在学中、金武町の村踊りの衣装復元を手伝ったことをきっかけに、沖縄の古い紅型を調査研究したいと思い、大学院修了作品は、筒描きと型染めで「琉装」を制作する。

大学院修了と同時に「知念紅型研究所」に就職が決まったことを嬉しそうに話してくれた希和子さん。
これからも彼女は伝統の新旧に様々な技法で挑戦を続けていくだろう。頼もしいかぎりだ。

【イベント告知】
11/3 紅型染ワークショップ
「コースターを染めてみよう!」
10:30~17:00
¥2,000(ドリンク付)
南谷茶房(那覇市首里鳥堀町4丁目7-2) (マップはこちら


【坂本希和子プロフィール】


坂本希和子(さかもと・きわこ)

1994年 高知県出身
2018年 沖縄県立芸術大学工芸専攻 染分野 卒業
現在 沖縄県立芸術大学大学院 修士過程2年 在籍

幼少期より沖縄を訪れる中で紅型染の色彩に惹かれ、沖縄県立芸術大学に進学。大学院では紅型における「筒描き」と「型染め」2種類の技法を併用した染色表現について研究制作を行う。




【筆者プロフィール】


本村ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学造形芸術科修了。
ラジオやテレビのレポーターを経てラジオパーソナリティとして活躍。
現在、ラジオ沖縄で「ゴーゴーダウンタウン国際通り発」(月〜金曜日 18:25~18:30)、「 WE LOVE YUMING Ⅱ 」(日曜日 19時~20時)を放送中。




前の記事漫画・ハマとんど~「カメのミカン...
次の記事【動画】細~い葉っぱの上に住んで...