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ルールは変えられる 100cmの視界から―あまはいくまはい―(58)


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おいしくて楽しいはずの給食の時間、アレルギーのある子は、みんなとは離れた机で食べたり、先生が子どもの間に座ったりします。私の友だちの子どもが通う沖縄の保育園では、アレルギーがある子は縮こまって食べているように見えたそうで、そのクラスでは給食からも週1回のお弁当からも、卵と乳製品をなくすことにしました。

栄養面での偏りが出ないよう小魚を多くしたり、保護者に理解を求めたりと、工夫や手間は必要でしたが、子どもたちが生き生きしてきたそうです。アレルギー項目に気を遣っていた先生も、働きやすくなったことでしょう。

1回決めたルールを変えるのは難しく、守るのが当たり前だと思いがちです。でも人は一人一人違うので、どんなルールにも合わない人が出てきてしまいます。ルールを守れないのは自分のせいだと思い込んで我慢をしたり、守ろうと頑張り続けて倒れてしまったりすることもあります。さらに悲しいことに、ルールを守っている人たちが「守れない人が悪い」と、マイノリティーを責めてしまうことだってあるのです。

子どもたちの運動会。お弁当作りがんばりました!

ルールに合わない人がいるのは当たり前。ルールも、何度でも変えられるようにしていきませんか。そして、そのルール自体が必要かどうかを考えることも大切です。運動会の定番だった組体操や、男女別の制服が見直されてきているのも、いいことですね。

私が変わるといいなと思うのはトイレです。車いすトイレは、おむつ替え台やオストメイト、着替えをする台などが設置され、多目的トイレとして進化してきました。障害がない人でも、広い個室なので回りを気にせずにゆっくりでき、使いやすいそうです。大きな荷物を持った人が使うこともあります。

マイノリティーのための便利さは広まりにくいのが残念ですが、これだけたくさんの人が多目的トイレを使うということは、みんながマイノリティーだと言えるのかもしれません。

ならばいっそのこと、普通のトイレを少なくして、普通のトイレの中にも、広くて、いろいろな便利さを取り入れた多目的トイレを作ったらいいのに。今の一般的なトイレの大きさから、車いすだって、ベビーカーだって、スーツケースだって入れる広さが普通になったらいいのに。

自分の使いやすさを形にしていくことが、相手の生きやすさにもつながっていく。人は一人一人違うからこそ、ルールや基準を少しずつ変えていけるようになってほしいです。

(次回は11月12日に掲載します)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2019年10月29日 琉球新報掲載)