ローソン沖縄×商業高校生 商品開発プロジェクト 「ピリ辛あぐーみそ炒めおにぎり」きょう発売!


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県内のローソン各店舗で28日より、中部商業高校とのコラボレーション商品が発売となる。その名も「ピリ辛あぐーみそ炒めおにぎり」。「こんなおにぎりがあったらいいな」という高校生たちのアイデアが、どのような過程を経て、実際に販売される商品となっていったのか。商品開発会議の様子を通して、生徒たちの奮闘を紹介する。

商品開発を行った中部商業高校のメンバー。(後列左から)宮田愛海さん、玉那覇沙樹さん、新城安達さん、比嘉李海さん、(前列左)平安山真衣さん、比嘉陸也さん

 店頭で買い求めれば、すぐに食べることのできるコンビニのおにぎりの手軽さに、地産地消と高校生ならではの楽しい遊び心をプラスした商品−。それが、中部商業の3年生6人によるチームが開発した「ピリ辛あぐーみそ炒めおにぎり」だ。

 同商品は、具材にあぐー豚の肉を使うことで地産地消を実現。味の決め手となっている唐辛子のピリ辛風味は、食事にもおやつにもぴったりな味わいとなっている。

 これらの特色ある材料を調理し、肉みそにすることで老若男女に支持される味わいに仕上げている。このおにぎりには、生徒たちのこだわりや工夫が生かされているのだ。

プレビューライバルは「シーマヨ」だ

 2019年10月9日。中部商業高校で行われた開発会議には、生徒たちと教師陣に加え、ローソン沖縄の商品開発担当者、実際に商品製造を行う琉球デリカサービスの開発担当者が参加した。この日の会議には、ローソン沖縄側が準備した2種類の試作品が持ち込まれていた。

 2種の試作品の主な違いはその風味。肉みそに一味唐辛子で辛味を加えた試作Aと、輪切りの乾燥唐辛子で辛味をつけた試作Bだ。2種共に食べ応えを重視し、一般的なローソンの商品より少し大きいサイズのおにぎりとすることになった。

 開発チームのメンバーたちは、実際に商品を作るスタッフと設備によって作られた試作品に感動した様子だったが、ローソン沖縄の商品開発担当者、仲間英一郎さんは落ち着いて味を吟味するようにとアドバイスした。

 主な購買層として世代や性別を想定し、その人たちがどんな時に手にする商品となるのか、を想像することが商品開発の基本だ。このことを生徒たちに伝えた上で仲間さんは、「ライバルを『シーマヨ』にするつもりで考えてください」と話した。

 「シーマヨ」とはローソンのおにぎり類の定番商品「シーチキンマヨネーズ」のこと。多くの人に愛される商品を作ろうという意気込みがその場にいた全員に共有された。

試作品を食べ比べる生徒たち

プレビュー辛すぎるかな? 0.1%単位で調整

 具材の味付けに関しては、開発チームの中で意見が割れた。最初の試作品が「辛すぎる」と感じてしまうメンバーが数人いたのだ。

 多数決を取れば、試作品の辛さが「ちょうどよい」と感じる生徒の方が多かったが、全員が納得する味わいを目指すためには、少数派の意見を切り捨てるわけにはいかない。何より、多くの人に支持される商品を作るためには、辛さ程度を慎重に決めることが大切だ。

 数回の話し合いと試作を重ね、肉みそ15㌘に含まれる唐辛子の割合を0.1%単位で検討した。最終的に「一味唐辛子0.2%、輪切りの乾燥唐辛子0.2%をブレンドし使用する」という結論にたどり着いた。

 最初の試作が辛すぎると感じていたメンバーも、唐辛子の持つ風味を生かしつつ、おいしく食べられる「ピリ辛」だと納得した。

 試作品を食べ比べる中で、驚きの結果も発見した。おにぎりを電子レンジで温めると、食べた際に感じる辛味の程度が変化したのだ。温めたおにぎりは、「『ピリ辛』だったものが『辛っ!』 になる」と楽しそうに話す生徒たち。この変化は、当初は予定していなかったものだが、これも商品の特徴として紹介しよう、と決定された。

ローソン沖縄の商品開発担当者のアドバイスを真剣に聞くメンバーたち

プレビューデザインは? 遊び心も発揮

 商品のパッケージデザインを手がけたのは、開発チームのリーダー、比嘉陸也さんだ。当初は一人で描画を行っていたが、なかなか良いと思えるアイデアが出ず、会議の場でも他のメンバーたちから修正や加筆の提案が出るため、苦戦を強いられた。それを見かねて、仲間さんや、生徒たちの担当教諭である謝敷香織先生が、アピールしたいポイントを書き出すようにとアドバイスした。

 全員で商品のイメージを再考し、購入者に訴えかけたい情報は何か考えた結果、商品のパッケージは、温めることで味が変わるという特徴が前面に出たデザインに決定された。

 黄色から赤へと変化するグラデーションを背景に、あぐーをモチーフにした2匹の豚のキャラクターが、辛さの変化を伝える。店頭でも目を引く、遊び心の効いたカラフルな見た目に仕上がった。

パッケージデザインに苦戦する比嘉陸也さん(左端)

プレビュー食べる人のこと 常に想像して

 おいしさにも見た目にもこだわった商品を多くの人に知ってほしい、という思いが強かった開発チームのメンバーたちは、独自にプロモーション活動も展開した。

 中部商業高校の設備を借りて開催された地域のイベントでは、手作りのチラシを作成。訪れた人に、商品とその発売日を知らせた。また、昨年11月に開催された高等学校総合文化祭と産業教育フェアでも商品の魅力や、開発の経緯を伝える発表を行った。

 6人の生徒たちは、柔軟で楽しい発想と、持ち前の行動力で商品を形にしていった。商品開発会議が一段落した昨年末、改めて話を聞いてみると、全員が口々に「意見の食い違いを、どうやってまとめていくのかが大変だった」と語った。

 他の生徒の意見だけでなく、購入する人々の好みや環境も想定しなければいけない商品開発は、常に他人のことを考えさせられる作業。時には、自分のこだわりを取り下げないといけないこともある。しかし、めげずに議論を重ねれば、最後には自信を持って「いい商品」だと言えるものが完成する。一つの商品を作り上げたという達成感や喜びは、かけがえのないものだと生徒たちは学ぶことができたようだ。

 「ピリ辛あぐーみそ炒めおにぎり」は28日発売。店頭で見かけた場合は「2個買い」することがおすすめだ。常温かレンジ加熱か、食べる際の温度で変化する辛さを楽しむことができる。


審査通過

最終選考、逸品ぞろい

 今回で4回目を迎えた、ローソン沖縄と県内の商業高校による商品開発プロジェクト。総勢63件の書類審査を経て行われた昨年9月11日の最終審査会には、5校8チームが参加した。審査員の一人でもあるローソン沖縄の古謝將之社長が「例年以上にレベルの高い審査会でした」と語った今回、グランプリを手にしたのが中部商業高校のチームだった。なんと2年連続のグランプリと商品化決定という栄光を手にした。

 惜しくもグランプリを逃した2位の「まーさんちんびん~紅イモ・抹茶~」(那覇商業高校)、3位の「アセロランピックヮーサー」(名護商工高校)も魅力的なアイデアで審査員をうならせた。

 また「クーブイリチーおにぎり」(南部商業高校)、「懐かしのもずくどぅんおにぎり」(那覇商業高校)、「紅USE(ユーズ)パン」(浦添商業高校)、「ホットじゃねぇ~じゃん! 紅芋ホットサンド」(那覇商業高校)、「ゴーヤーおにぎらず」(浦添商業高校)も健闘した。

2019年9月11日に行われた最終審査会に出場した全チーム

企画・制作 琉球新報社営業局

(2020年1月28日 琉球新報掲載)