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サンタのハグが苦手な子~ 100cmの視界から―あまはいくまはい―(65)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

私は海外旅行ではスーパーマーケットに行くのが大好きです。その国の特徴、生活スタイルを感じることができるし、何よりお土産選びは楽しいからです。オーストラリア旅行でびっくりしたと同時にうれしくなったのは、大手スーパーマーケットチェーンでは「quiet hours(静かな時間)」を毎週1時間程度、設けていることです。スーパーは蛍光灯の光が明るかったり、音楽が流れていたり、レジの音など、いろいろな刺激があり、自閉症をはじめとする、過敏な人には入りづらい場所です。でもこの時間は光を弱めに設定、音楽は流さず、カートも使用禁止にして、過敏な人が安心して買い物ができるように工夫しているのです。開催時間はホームページでも、店頭でもチェックできます。

いろいろな人へ配慮することは難しいこともあるけれど、環境を調整することで、選択肢を増やすことができます。安心して買い物ができることは、誰にとっても大事ですよね。お店としても売り上げにつながるでしょう。

またクリスマス時期に、ショッピングモールで、サンタクロースが子どもをハグするイベントもありますが、さわられるのが苦手な子どものために、ハグをしない時間も設けているそうです。特徴のある子どもも含め、誰もがクリスマスを楽しめるように考えられているのがいいですね。

地元の食材を調理したスーパーのデリコーナー(撮影・Kyoko Katayama)

困っている人が、助けを求めたり、新しい提案をしたりすると、「それくらい我慢をすればいいじゃない」「配慮を希望するなんてわがまま」と周りから言われることがあります。でも選択肢が増えると、いろいろな生き方を選べるようになるので、困っている人だけでなく、たくさんの人の便利さにつながります。だからこそ「こんなことを言ったらわがままかな?」と周りにお願いすることをためらわずに、自分に必要なこと、思いついたことをリクエストしてみませんか?

誰かのハッピーチャンスにもなるかもしれません。

新しい提案を受ける側も、それをめんどくさい、いらないと否定するのではなく、耳を傾けてみませんか?

ちなみに旅行先では、必ず発熱し、寝込む夫。家族としてはがっかりなのですが、最近ではそれを見越して、現地で友だちやシッターを見つけ、サポートを頼んでおきます。今回も予想通りに夫が寝込んだので、友だちにサポートをお願いしました。トラブルこそがトラベルの醍醐味(だいごみ)!?

助けを求めるのは大変なこともあるけれど、人とつながることができてプライスレスです。これからも旅を続けていきたいです。

(次回は2月18日)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2020年2月4日 琉球新報掲載)