自然の象徴をサボテンに込めてー本村ひろみの時代のアイコン(25)三重奈央(デザイナー)

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那覇市前島の海沿いにオープンした話題のアートなホテル。“ホテル アンテルームナハ”の216号室に奈央さんの作品が飾られている。客室のドアを開けると正面のベランダから西日が差し込んでいた。銀色に輝く海原が眩しくて一瞬目を閉じて、ゆっくりと目を開けると壁一面が色彩のラッシュなのに気づいた。作品「還える日」。縦2m横4mの大きな作品だ。
 


『還える日』

瞳を凝らし、背筋がピーンとなった。
湿度を感じる原色とビートを刻むような構図から熱量が伝わってくる。絵を眺めていると、客室に奈央さんがやって来た。静かな空気を携えて。SNSで彼女の作品をずっと見ていたので、念願の対面だ。
控えめに挨拶する彼女と目の前のビビッドな絵の印象がかみ合わない。戸惑う私は彼女に聞いた。
「サボテンが好きなんですか?」
奈央さんは真っ直ぐな瞳で
「トゲトゲがあったり毒があったり。そんな自然の象徴です」と答えた。





ドローイングから「はり絵」へ

サボテンを描いたシリーズ「サボテンの星」は連作になっている。
大学3年(2018年)、ドローイングの授業の時、奈央さんのアトリエを見て担当教授の田中睦治先生がさり気なく提案してくれた一言が彼女の作風を変えることになった。
「この捨てられた紙をコラージュしてみたら?」
それまで水彩で自然を描いていた奈央さんが、自分の持っている自然観を表現する方法を模索している時にアドバイスをもらった。チャレンジしてみたら一気に表現が広がった。
コラージュの第一作目の作品「joy」は彼女のアトリエで捨てられていた紙を画面に色彩構成したもので、爽やかなグリーンを用い“喜び”を現したものだ。


『joy』

色彩の魔術師と呼ばれるマチスの切り絵が好きだった奈央さんはこの手法にのめり込んだ。そしてそこから一年間「サボテンの星」を連作で10作品描くことになる。サボテンの造形のユニークさ、自然との共存への想い、自然への畏怖、その想いで描き続けた。


『5番目の季節』


サボテンの星

彼女の作品の前で目を凝らして見て欲しい。
サボテンの星に生きる小さな存在を発見することができる。
自然との対比。それはちっぽけで儚い存在。
世界を俯瞰してみると、私たちの存在はまるで蟻のよう。
その小さな存在は奈央さんかもしれないし、私たちかもしれない。「サボテンの星」には、そんな視点で自然を見て欲しいという願いが込められているのかもしれない。


『ごはんの時間』

高校まで自然に触れ合う機会があまりなく生活してきた奈央さんにとって、沖縄での4年間は刺激的だった。描く色彩も影響を受けたという。
そしてこの春、沖縄を離れ初めての土地で新生活がスタートする。
取材で会ったのは彼女が沖縄を離れる数日前だったけど、パワーのある作品と奈央さんに会えて良かった。


『帰り道は何処に』

デザイナーとしての一歩を踏み出す奈央さん。
「人間の技が神の技を超えてはいけない」というアントニ・ガウディの言葉を胸に、サボテンの星から次回はどんな星を作り出すのか、私は新緑の葉に座った妖精の気持ちで楽しみにしている。



【三重奈央プロフィール】


三重奈央(みえ・なお)

1998年 大阪府出身
大阪市立工芸高校でビジュアルデザインを専攻しながらも、ファインアートの世界に惹かれ、沖縄県立芸術大学絵画専攻油画コースに進学。主に自身の自然観をもとに、アクリル絵の具やいろ紙を用いて植物をモチーフに制作している。




【筆者プロフィール】


本村ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学造形芸術科修了。
ラジオやテレビのレポーターを経てラジオパーソナリティとして活躍。
現在、ラジオ沖縄で「ゴーゴーダウンタウン国際通り発」(月〜金曜日 18:25~18:30)、「 WE LOVE YUMING Ⅱ 」(日曜日 19時~20時)を放送中。




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