女性を脅迫し裸の画像を送らせ、メッセージアプリ「テレグラム」で共有した事件が韓国で問題になっています。被害にあった女性は少なくとも74名で、うち未成年者は16名とのこと。女性団体は、このテレグラムを26万人以上が利用したと推定し、その加害者の多さも、世の中に衝撃を与えています。
「高額のアルバイトがある」と誘い出す
3月25日、韓国にて「n番部屋事件」の主犯の男性の身元が公開されました。
この事件では、SNSで「高額のアルバイトがある」と女性を甘い言葉でおびき寄せ、顔写真や体が映った写真を送るよう要求。その後、個人情報を聞き出した上で、それらをもとに「裸の画像を送れ!」と脅迫したのです。
こうして送られた裸の画像は、メッセージアプリのチャットルームにて共有。女性を「奴隷」として扱い、裸の画像などを餌に、チャットルームへの入場料で稼いでいたとのことです。
(このチャットルームは複数あり、「1番部屋」「2番部屋」とそれぞれナンバリングされていたため、まとめて「n番部屋事件」と呼ばれています)
女性たちは裸の画像だけでなく、自らを傷つける動画の投稿を強要されたり、あるいはチャットルームの会員メンバーによって性的暴行 が行われたことも報告されています。
さらに被害女性たちは「他の女性も連れてこい」と脅迫され、自分の友人などをn番部屋に呼ばざるを得なかったということです。
非常に悪質な事件であるにも関わらず、韓国の既存の法律では刑がとても軽いことから、女性団体を中心に厳罰化を求める署名などが集まっています。
匿名性の高いメッセージアプリ
この事件で使用された「テレグラム」は、ロシア人技術者が開発したメッセージアプリです。メッセージは暗号化されて送受信され、匿名性の高さが特徴です。
昨年の「香港民主化デモ」の際は、若者のデモ隊がテレグラムで情報を共有、デモに役立てていました。
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こうした匿名性の高さから、容疑者の捜査も難航しているとのことです。
匿名性が高いことが、民衆の「武器」になることもあれば、犯罪に使われることもある。テクノロジーの功罪をこの2つから感じることができます。
男性が被害に遭う場合も
「裸の写真を送るよう脅迫される…」これは何も女性だけが被害に遭う話ではありません。
男性を対象にした、「セクストーション(性的脅迫)」 の被害も確認されています。
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自分の裸の写真をカメラで撮影し、送ってはいけません。例え恋人やパートナーであっても、破局後に写真をばら撒かれる「リベンジポルノ」という犯罪も発生する可能性があります。
18歳未満の裸の写真は「児童ポルノ」に該当するため、画像を保存しているだけでも「児童ポルノ禁止法」に該当し、罰せられることがあります。
つまり、18歳未満の人はこの法律を盾に画像の送信を拒否することができます。
「私が裸の写真を送ると、あなた犯罪者になるよ」と。 18歳未満は、法律を武器に拒否するよう、活用してください。
加害者にならないために
韓国で発生した「n番部屋事件」では、被害にあった女性が74名。
一方、そのルームに参加した人数は26万人と言われています。
圧倒的に加害者の方が多いのが分かります。
統計で考えると、男性の場合は「被害に合わないように」よりも、「加害者にならないために」を意識した方がいいと思います。
2月には、奈良県の中学校で同級生の着替え風景を盗撮し、その画像を中学生がLINEで共有していた事件が発生しました。「n番部屋事件」と、地続きの事件です。
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「スマホやネットの問題」でもあると同時に、これは「女性の人権」に関する問題でもあります。
他者の人権を尊重する意識が薄いと、最新のテクノロジーを使ってすぐに同種の事件の加害者になるでしょう。
「n番部屋」に参加し、被害女性たちの裸の画像を楽しみにしていた人の中には「良き父親」「良き上司」の人たちもいたでしょう。極悪人でなく、私たちとそう変わらない普通の人が興味本位で参加していたのかもしれません。
「外国で起きた事件だから」「一部の悪い人がやったことだから」と他人事として捉えるのではなく、自分の身近で似たような事件が無かったか、自分自身にその「芽」はないか。
特に男性は、n番部屋事件から学ぶべきことがとても多いと思います。
琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」4月5日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。
親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。
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モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。