早く家に帰りたくなる!県産木材で作るこだわりの家具


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細部にストーリーが宿るものづくり

TMSはディレクションを手がける友田雅俊さんと、職人の玉城智志さんのコンビが手がけるブランド。現在は受注生産で家具作りを行う。2人の後ろにあるのは県内出身のペインター、Denpaさんとコラボした自社看板 写真・村山 望 撮影協力・PIN-UP
〈左〉チャーギ(イヌマキ)製のスツールを藍染め作家の大城拓也さんが染めたもの。〈右〉ウクライナタモを使ったウッドチェストは家事の最中にも使いやすいサイズ感に設計されている。
イジュを使用したダイニングテーブルとチェア。イジュならではの柔らかい木目がうつくしい。
ナラ製のローボードは部屋のまじきりとしても使える。

TMSは、友田雅俊さんと玉城智志さんが設立した家具ブランドだ。シンプルながら使いやすいデザインで買う人の「一生もの」になるような製品を企画・生産している。県産の木材使用にも意欲的だ。他分野の工芸やアートとも積極的につながりを持つようにしていることも、一般的な「家具屋さん」とは一味違う。二人に、ものづくりに対する思いを聞いた。

友田さんと、職人の玉城さんはもともと浦添工業高校デザイン課の同級生。卒業後、服飾業界でデザインと製品の企画を仕事にしていた友田さんと、木工職人として修行を積んだ玉城さんが「沖縄を代表する家具ブランドに」と決意して立ち上げたのがTMSである。

こだわりつつもシンプルに

製品企画やコンセプトなどディレクションを友田さんが、実際の家具製作は、玉城さんが手がける。全ての製品に共通しているのは「シンプル」であること。どんな部屋の雰囲気にも合い、長く使っても飽きのこないデザインを大事にしている。シンプルと言っても、作りが簡素というわけではない。普遍性のある造形の中に使う人への配慮をまとめている、という点がTMS製品の魅力だ。椅子やテーブルならば、体を安心して預けられる形状、収納家具は家事の最中でもアクセスしやすい角度を確保している。

木目や、造形の微妙な部分など、家具の細かい特徴を紹介する玉城さん。玉城さんはオーダーメードで家具、建具を受注する「玉城木工商店」としても活動中。TMSの名称は「玉城木工商店」や二人の名前の頭文字が基になっている
服飾デザイナー「thimodama(ティモダマ)」としても活動する友田さんの作品『トワル・ド・ジョイ』

シンプルさと機能性の両立は、簡単な作業ではない。2人は実際の木材でミニチュアの模型を作り検討を重ねるそうだ。加えて友田さんは、「玉城は技術があるので、放っておくと凝って作り込んでしまう。そこをコントロールするのも僕の役目です(笑)」と話す。

先月20日~24日には、宜野湾市のギャラリー「PIN─UP」で、ブランド初となる展示会を行った。会場には、受注生産を行う家具の見本と共に、オリジナルの衣服や、県内の工芸作家やアーティストとブランドがコラボした作品がならんだ。

「ただ家具を見てもらうだけでなく、僕らのバックグラウンドも知ってほしい。そこから共感も得られると思うので」

友田さんは、製品だけでなく作り手にも親近感を持ってもらいたい、と考えているそうだ。

機能性だけじゃない

「このダイニングテーブルはイジュ製。県産の木です。目立たない部分ですが、木の耳(辺材)をあえて使っている箇所もあるんですよ。木一本ごとの曲がりや木目を生かしています」

イジュの木本来の曲がりを生かしたダイニングテーブル(撮影協力・ON THE SAME HOTEL)
イジュの木で造形し、藍染め作家の大城拓也さんが染めた花台。実際に使う場面をイメージできるように、陶芸作家・嘉数郁美さんの花瓶を合わせた

職人として家具作りに打ち込む玉城さんは、製品の特徴について話すと止まらない。木材の質感、各部のディテール、使用する金属の部品に至るまで細かな気配りをしながら、前述の通りシンプルなデザインにまとめているのだから心憎い。木の表皮に近い「耳」と呼ばれる部分は、直線的なデザインのテーブルなどのワンポイントに。これは愛着が湧くような工夫だ。玉城さんは「初めて触れる人は『えっ』っておどろくんですが、説明すると気に入ってもらえるんです」と楽しげに言う。

イジュやドゥスン(オガタマノキ)など県産の木材は、金武町にある企業組合「キンモク」から供給してもらっているというTMS。県産の木材を広め、持続的な生産をサポートできれば、という思いもあるそうだ。友田さんは「デザインにストーリー性を加えることを大事にしています」と話す。機能性以外の部分も見て、製品を選んでほしいそうだ。玉城さんも「製作した家具は補修もするので、一生ものの家具を提供します。毎日、『早くおうちに帰ろう』っていう気持ちになれますよ」と続ける。

暮らしを豊かにするTMSの製品たち。ぜひじかに触れ、二人と話してその良さを知ってほしい。

(津波典泰)

TMS

【住所】〒901-0511    
八重瀬町港川128 (マップはこちら
【HP】tms-okinawa.com    
【インスタグラム】@tms.okinawa

(2020年4月16日付 週刊レキオ掲載)