失業者100万人、病院倒産…コロナ禍長期化で迫る深刻な危機


社会
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品薄になるスーパーも(写真:時事通信)

外出自粛期間が続き、すでに人々の間では“コロナ疲れ”“コロナうつ”といった言葉も広まっている。コロナ禍長期化は今後、日本にどのような影響を及ぼすのだろうか? NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は言う。

「おそらく5月の連休明け以降も、緊急事態宣言は継続されると思います。さらにハーバード大学の研究グループが指摘するように'22年まで、外出自粛要請が断続的に続くのではないでしょうか。感染をおそれて病院での診療を敬遠する方も増えています。たとえば私がチームでやっているナビタスクリニック・グループも、3月は昨年に比べて患者数が4割減です。今後は倒産する医療機関も増えていくと思います」

病院ですら倒産すると、上理事長が指摘するように、経済の専門家たちによれば、コロナ禍長期化の日本経済への打撃はかなり深刻なものになるという。

「景気ウォッチャー調査で特に影響が顕著となる順番としては、(1)旅行・交通関連、(2)百貨店、(3)飲食関連、(4)レジャー施設、となります。旅行業界でいえば3月に日本を訪れた外国人旅行者数は、前年同月と比べて93%減です。また'08年のリーマン・ショックの際は1年間で失業者は113万人増加しました。当時に比べて非正規雇用者が増えていますので、今回の失業者数はそれを上回る可能性があります。リーマンのときに最も大きな影響を受けたのは大企業製造業でした。しかし今回は中小のサービス業が影響を受けていますので、倒産件数もリーマン時を上回る増加になるかもしれません」(第一生命経済研究所首席エコノミスト・永濱利廣さん)

また経済評論家・岩崎博充さんは、株価暴落の可能性を指摘する。

「東芝は7万6千人の従業員を対象にして、4月20日から5月6日まで国内の全拠点を休業すると発表しました。しかし2週間程度ならともかく、そういった状態が緊急事態宣言の延長により長期化するとどうなるでしょうか? 大企業だから内部留保があるとはいえ、2カ月も続けば、それを相当取り崩してしまうことになるでしょう。それ以降は、株券や債券を現金化し、社員の給料に充てていかなくてはいけません。内部留保の取り崩しは、大なり小なりほかの企業も抱えている問題で、今後は株や債券の暴落が始まります。私の予想では7月ごろからその動きが目立ってくると思います」

さらにコロナ禍長期化は私たちの日常生活も直撃するという。各国で続けられている移動制限が農業従事者の移動や食料品の流通も妨げ、生産や流通にも影響を及ぼす可能性があるというのだ。4月1日には世界保健機関や世界貿易機関のトップたちが世界的な食料不足が発生する恐れがあるとも、警告している。資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫さんはこう語る。

「国内の食料を確保するため、ロシアやカザフスタンのように、すでに輸出規制に踏み切っている国も出ています。たとえば日本は小麦の9割を輸入に頼っており、輸入元はアメリカ・カナダ・オーストラリアなどです。どの国もコロナ問題を抱えており、今後、輸出規制を採択する可能性も出てきます。するとこれらの国から思うように輸入できなくなり、日本国内での食料品の不足や値上がりも目立ってくることになるのです」

すでに日本の食料輸入量には陰りも見え始めているという。

「たとえば小麦やチーズ、それにアジやサバ、タコといった一部の水産物の輸入量が昨年の同時期に比べて、かなり減少しています。すべてがコロナの影響というわけではないかもしれませんが、各国でサプライチェーン(製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、配送、販売、消費といった一連の流れ)の混乱が発生しているようです」(食品問題評論家・垣田達哉さん)

そうしたサプライチェーンの混乱が生じているのは食料品ばかりではない。未来調達研究所取締役で調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんは衣料品について指摘する。

「日本のアパレル業界も大きな影響を受けています。ある程度の高級ブランドであれば、日本でデザインし、イタリアなどヨーロッパで高品質の布地を調達、それを人件費が安いベトナムやインドネシアなどの東南アジアで縫製するというグローバルなサプライチェーンがあるのです。それがイタリアから高品質の布地が入ってこなくなったり、さらに東南アジアでも工場が閉鎖されたりと、各地でサプライチェーンが寸断されようとしています」

1人の油断が、地域そして国内での新型コロナウイルス拡大感染を許し、ひいては国際的に悪影響を……。コロナ収束のめどがたち、緊急事態宣言が1日も早く解除されるためにも、一人一人の自覚が求められている。

「女性自身」2020年5月5日号 掲載

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