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あなたの理想の世界は? 100cmの視界から―あまはいくまはい―(71)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

神奈川県に住む私は沖縄のことが心配で、毎日祈るように過ごしています。早く沖縄に帰って大切な人と会いたい、でも今は控えないといけません。こんなにも沖縄が遠くに感じるなんて、まさか世界がこんなに変わるとは3カ月前には思いもしませんでした。

早く前の生活に戻りたいと思っていたけど、だんだんと気付いてきました。前の生活と全く同じ生活に戻ることは、きっとできないでしょう。新しい世界を作っていくしかないのです。

これからは、感染症対策をベースにした学校が当たり前になり40人一斉授業や学校行事はなくなり、オンライン授業が当たり前になる? 家の間取りも仕事部屋があるのが普通でリモートワークが基本になる? 大きなテーブル席があるレストランはなくなり壁に向かって座る席やテラス席が基準になる? 「昔はお祭りというのがあって、たくさんの人でにぎわったんだよ」「友だちを呼んで、ごちそうを作ってホームパーティーをしたね」「外国にも簡単に行けたんだよ」と話すのかもしれません。

姉家族と自然の中でピクニック

ただ東日本大震災の後、原発はなくなると思ったけれどなくならなかったし、前の生活とほとんど変わらない生活を送っている人もたくさんいます。変わることって意外に難しいのかもしれません。「新しい世界を作っていく」と決めない限り。

生活が制限される今は不安しかないけれど、このままオンライン授業が広がることで不登校という定義がなくなるかもしれません。リモートワークが広がることで、障がいのある人は働きやすくなるかもしれません。どんな生活にもメリットとデメリットがあります。災い転じて福となす。変わることでいいこともあると信じたいですね。もちろん今までの幸せの形が変わったり、同じ楽しみ方ができなかったりすることはつらいのだけれども。

そして変化で引き起こされた犠牲は、できるだけ制度で補っていきましょう。この状況だから切り捨てられている人がいるのは仕方ない、ではなく、今まで私たちが積み重ねてきたいいところは、できるだけ守っていきましょう。そして、変わる時というのは、理想を形にできるときでもあるのです。どんな世界に住んで、どんな生活をしていきたいのか。私はいろいろな生き方が大事にされ、助け合いが広まることを願います。

今はこまめな手洗いを忘れずに! 「こんな生活は怖いね、楽しくないね、家にいるので〇〇にはまっているよ」と電話で友だちと話しながら生き抜いていきましょう。

(次回は5月12日)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2020年4月28日 琉球新報掲載)