予測不可能な時代をサバイブするために必要なコト【持続可能な働き方を求めて@沖縄】


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「働き方改革@沖縄」は「持続可能な働き方を求めて@沖縄」にタイトルを一新しました!
AIの発達や人口減少などの従来の変化の波に加え、新型コロナウイルス感染拡大など、地球規模の出来事が一人一人の「働き方」にも大きな影響を与えています。
激変する環境の中で、企業も労働者も「持続可能(サステナブル)」な働き方を実現するためには―。沖縄の経営者、労働者、学生たちと日々向き合っている専門家3人がリレー形式で「働く」をめぐる課題と解決へのヒントをお届けします。執筆者は変わりません。

こんにちは、人材開発コンサルタントの福島知加です。
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、私たちの働き方は大きな変革期に突入しています。これまでも働き方改革や新元号のスタートなど変革の年と騒がれていましたが、こんなにも自分ごととして捉え、「当たり前のことが当たり前じゃなくなる」感覚を初めて味わったという方も多いのではないでしょうか。

当たり前だった大人数での会議も人数は極力減らすようになりました。すぐ近くの席で相談に乗ってくれた上司や同僚もソーシャルディスタンスを保つために席を離したり、そもそも会社へは行かずリモート対応になったり。お客さまとのコミュニケーションもリモートで行う会社も増えてきたように感じます。

リーマン・ショック以上に仕事や人生への価値観を変えたと言われている新型コロナウイルスは、私たちに何を伝えたかったのでしょうか。

【執筆者プロフィール】

福島知加 (ふくしまちか) ワダチラボ 代表

営業、人事、キャリアコーチの経験を経て2017年に独立。
現在は「コミュニケーションで個人と組織をHAPPYに」を指針に企業や大学生向けにカウンセリング、研修講師を務めている。
趣味は自己分析、ジャニーズを応援すること、泡盛をたしなむこと。
1984年中城村生まれ。1児の母。

変革期に必要なのは“自己肯定感”

これまで約2万人の支援に携わってきて感じること。それは、人生に大きな影響を与えるキーワードは「自己肯定感」であるということです。「自己肯定感」とは、ありのままの自分を肯定的に受け止めることを指します。

人によってサイズはさまざまな「自己肯定感」ですが、一般的には、自己肯定感が高いと「自分の強みや弱みを受け入れられ、前向きに行動し、もし失敗してもその壁を乗り越えてチャレンジを続けられる状態」であると言えます。その一方で、自己肯定感が低いと「自分の強みも弱みを受け入れられず、人と自分を比較し続け、何も行動できない状態」になります。

ちなみに「自己肯定感が低い=ネガティブ思考」とは一概には言えません。ネガティブ思考は行き過ぎるとコントロールが難しい思考となりますが、通常ですとリスク管理や向上心にもつながります。ですので、ネガティブ思考でも落ち込まなくてもいいんですよ。

どちらにしても「自己肯定感」は現代の必須キーワードとも言えるので、自己肯定感が低いかも…と思われる方は、自己肯定感について学ぶことでご自身の人生を少しでも楽にしていただきたいですし、自己肯定感が高い方かも!と思われる方も、自己肯定感について理解をすることでさらに自己肯定感が高まり、より相手を想像しながら行動できると思います。

特にこのコロナの状況下においても、これから拍車がかかるVUCA時代※1においても、さらに「変化を伴う行動」と他者からの承認の機会が減っても、「自分で自律的なキャリアーを描く力」が必要になってきます。そこの土台となる大きな鍵がこの「自己肯定感」になります。

※1「VUCA時代」とは、予測不可能な時代を指す言葉。Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字をつなぎ合わせた造語。

自己肯定感が高まる二つのステップ

1、自分とのコミュニケーションを大切にする
コミュニケーションには「他者とのコミュニケーション」と「自分とのコミュニケーション」の2種類あります。コミュニケーションというと、誰かとの会話や対話をイメージする方も多いと思いますが、私たちは誰かと会話する以上に自分とのコミュニケーションを毎日とっています。

「今日は何着ようかな」
「今日のお昼ご飯は何を食べようかな」
「この仕事は今日までの締め切りだから朝のうちでやっておこう」
「子どものお迎えの前に買い物に行こう」

などなど。こんな感じで毎日自分とのコミュニケーションで「感情」が生まれ、「思考」が動き、「行動」につながっていきます。

私がこの仕組みに気付いたのは独立して2年目の頃でした。何回キャリアカウンセリングをしても、何回研修を受講してもらっても、パフォーマンスが上がらず、全く行動につながらないケースが数件ありました。そこで、心理学を学び直した結果、自分とのコミュニケーションと「自己肯定感」が大きく関わっていることに気付き、毎日の自分とのコミュニケーションを少しずつ変えてもらいました。その結果、自分の感情と向き合えるようになり、行動も少しずつ変化してきたのです。

★ポイント 「できたこと」に目を向ける

では、自分とのコミュニケーションをどう変えたか。方法はいくつかありますが、その中でも毎日実行してもらいたいのが「できたこと」と「明日行動したいこと」を内省することです。人は本能的に「自分の欠点」に目が行きがちと言われており、意識しないと自分のできたことを振り返る機会はあまりないように感じます。

このチャレンジをした介護士のAさんは以下のように話してくれました。

「毎日できたことと明日行動したいことを振り返ることで、自分の考え方がポジティブになり、発言までもポジティブになりました。一番良かったことは周りへの声がけが変わったことです。特に子どもへの声がけが、できていないことや周りの子と比べるのではなく、できたことに対して伝えることが増え、子どもたちも笑顔をよく見せてくれるようになりました」

まさに、Aさんのように毎日の自分とのコミュニケーション中に「できたこと」と「明日行動したいこと」を入れることで、「思考」が前向きになり、「行動」につながるだけでなく、近くにいる人へプラスの影響を与えられる可能性も増えていきます。そして、毎日続けられていることも自信になり「自己肯定感」が高まっているように感じられます。

また、自己肯定感とは少し異なるデータになりますが、ペンシルベニア大学の心理学者アダム・グラント教授の有名なデータによると、人生で最も成功するタイプは「自分も相手も大切にできる」ギバータイプだと発表しています。このことからも相手を大切にするだけでなく、自分も大切にすることの重要性が見えてきますよね。

2、自分の強みを理解し、強みを生かす
人は自分の情報(視点)を増やして生かすことで、失敗や壁が乗り越えやすくなると言われています。自分の情報(視点)とは特性や価値観、これまでの経験やリソースなど挙げられますが、その中でも強力なのが「自分の強み」を理解し生かすことです!

世界的調査会社ギャラップ社の調査データによると、「自分の強みを理解し、その強みを生かすと生活の質が約3倍上がる」と発表されています。そのほかにも、生産性の向上や収益率のアップ、組織においても個人の強みに興味を持ってそれらを生かしている組織は、エンゲージメントが約6倍とも言われています。

これらは、結果的に小さな成功体験を積みやすく、「自己肯定感」を高めてくる要素となります。そんな良いところだらけの「強みを生かす」ですが、そもそも自分の強みが分からないという方も多いのではないでしょうか。

★ポイント 強みを見つけるには“客観的な視点”が有効

強みを見つける方法はいくつかありますが、より効率的に見つける方法は客観的な視点で見つけることです。客観的な視点の中で、オススメの方法は、自己理解を深めるアセスメントツールの活用です。

私が実際に活用しているアセスメントツールは、九つの性格タイプから診断する「エニアグラム」、もしくは行動スタイルで診断する「DiSC」です。その他にも16タイプで診断する「MBTI」や34の資質から自分の強みを探る「クリフトンストレングス・ファインダー」などもあります。

アセスメントツールは検索するとたくさんあるので、何を受けたら良いか迷うと思いますが、私のオススメの方法は二つ以上受けて、共通項の特性を書き出し、家族や友人、職場内の人に「自分ってこういうところある」と聞いてみると良いと思います。もし「そういうところあるかも」と言ってもらえたらご自身の特性や強みと言えるでしょう。

また、ご自身で導き出したい場合は、過去の「成功体験」と「失敗体験」を具体的に細かく書き出し、「成功したのは自分の◯◯力が影響したのか」「失敗したのは自分の◯◯力がなかった、もしくは◯◯力を発揮し過ぎたのか」の「◯◯力」を具体的に探っていくと自分の強みと弱みが見えやすくなります。その際にキャリアコンサルタントやコーチなどの専門家に伴走してもらえると、より効率的に深められると思います。

成功体験と失敗体験の例は次の通りです。

●成功体験の例
女性向けイベントを企画し、3カ月という短い準備期間の中で、100人の目標に対して120人集客することができた。
・なぜ成功できたのか→当初は個人で集客する予定だったが、準備期間が少なかったため、発想を変え、スポンサー企業の特典に参加権10人分を入れた結果達成することができた。
・どんな力が影響したのか→達成力(達成に対してのコミット)、発想力(発想を柔軟に転換)

●失敗体験の例
部下の営業成績が下がった。
・なぜ失敗したのか→部下に嫌わせるのが嫌で、できていないことを注意できなかった
・どんな力が足りないのか、影響したのか→信じる力(人の可能性を信じる)、コミュニケーション力(注意の方法が分からない)

★ポイント 強みを生かす

強みが見つかれば、あとは生かすだけです!
ご自身の強みを生かすことができれば、より効率良く、より効果的にパフォーマンスが上がるので、ぜひとも強みはどんどん活用していただきたいです。

その一方で、強みを生かしすぎて失敗してしまったり、強みとは正反対の能力が足りず、人間関係をこじらせてしまったりするケースもあります。
ですので、自分の弱みや価値観(大切にしていることや、常識、当たり前と思っていること)を一度受け止め、そこも少しずつ受容し、周りに自己開示できるといいですね。

また、弱みを改善することも自己肯定感につながりますので、少しずつで構いませんので、弱みを改善できる方法を探り、周りに自分が持つ弱みを強みとして生かしている人がいれば、その方のまねをしてみるのもいいと思います。

話しやすい環境づくり

最後に、今回は「自己肯定感」が高まる二つのステップについてお伝えしてきましたが、自己肯定感は環境にも大きく左右されます。その環境をつくる上で私自身とても大切にしていることが「人に興味を持つこと」です。

私は年間で約200人の年齢・性別もさまざまな方のカウンセリングをしていますが、カウンセリング終了後に言われるセリフナンバーワンは、「自分のことをこんなに話したの初めて」です。私は職業柄、人の話を聞くことがお仕事なので、このセリフをもらえるのは自然なことだと思いますが、カウンセリングは長くて120分です。となると、普段の生活の中でいかに自分の話が周りにできていないかが分かります。

私自身も学生時代、会社員時代を通しても、周りの人に自分の深い部分について話した記憶があまりませんでした。しかし、キャリアカウンセリングやコーチングの学びを通して、自分の深い部分に気付き、自己肯定感が高まったように感じます。もし、大切な誰かの自己肯定感を上げたいという方がいたら、ただただ相手の話に耳を傾け、いろいろな質問を投げかけてあげるといいと思います。その際にやりがちな提案やアドバイスはこの日は封印してあげてくださいね。

◆執筆者プロフィール◆
福島知加(ふくしまちか)ワダチラボ 代表
https://www.wadachilab.com/

「コミュニケーションで個人と組織をHAPPYに」をテーマに人材育成、キャリアカウンセリング、コーチング事業を展開し、年間で70社、約2000人の支援に携わっている。

自身が営業時代に全国最下位から全国1位を経験したことと、別の企業でメンタル不調を経験したことから、セルフコミュニケーションとリーダーのコミュニケーション重要性に気付き、自身の経験と心理学やビジネス・マネジメントスキルを用いて研修を実施している。

沖縄県産業振興公社登録専門家。沖縄県観光人材育成マッチングサイト「育人」認定講師。銀座コーチングスクール沖縄校運営。1984年中城村生まれ。1児の母。