台湾から届いたビデオメッセージ~Music from Okinawa・野田隆司の世界音楽旅(9)

  • 沖縄県全体
このエントリーをはてなブックマークに追加


台南駅。故郷の駅のプラットフォームの風景に似ているので、この駅に降りるたびにノスタルジックな気分に。

台北を拠点に活動する3人組のアコースティックユニットFour Pens。
先日、そのメンバーのサニーさんから1本の動画が届いた。5分足らずのビデオには、去年の7月に、沖縄をツアーした時のフッテージが収められていた。

昨年3月の終わり、個人的にかなり気になっていた韓国のADOYというインディーズバンドが台湾でライブを行うと聞いた。主催は、台南のLUCfestのチームで、”LUCfest Warm up Party”として開催されるとのこと。そのライブに合わせて台南と台北を2泊3日でまわった。
那覇から台湾南部の高雄まではLCCで1時間半ほど。そこからローカル線に揺られて台南まで。ネットで予約した安いホテルにチェックインして、ライブ会場に向かう。
スマホの時差が切り替わっておらず、早い時間に会場に着くと、LUCfestのオーガナイザーの KKがいて立ち話。韓国のインディーバンドが台湾でどれだけ集客できるのか気になって尋ねると「今日はあんまり売れてない、200〜300枚かなぁ」。さほど大きくはない街で、それだけ動員ができれば、十分に合格だと思う。


古い倉庫をリノベーションしたライブスペース、U11 Performance Art Space 拾壹庫展演空間。台南駅のすぐ近く。

会場は、U11 Performance Art Space 拾壹庫展演空間。古い倉庫を改装したスペースで、開演まで隣のスポーツバーで、地元のクラフトビールを頂く。LUCfestの時にも感じることだが、台南にはとても魅力的で居心地の良い空間が多い。
台湾で人気が急上昇中の雷撃とManic Sheepが先に演奏して、メインアクトのADOY。シンセロックをベースにしているが、曲によってサウンドのイメージは様々だ。ポストロック的だったり、80年代のUKロックみたいだったり、K-POP的な香りがしたり、面白かった。背景に流れる映像も音楽とうまくシンクロして、演奏をより印象的なものにしていた。とてもレベルの高いパフォーマンスはある種衝撃的で、実に素晴らしかった。


ライブの後は深夜まであいている台南担仔麺の店を訪ねる。少量なので小腹の空いた夜中に最適。

翌日、台北での予定は夜のライブだけだったので、移動はバスにした。4時間ほど。
「明日、沖縄に戻るまでに、どこかで会えたら」。車中、パソコンを開いて、以前からとても気になっていたFour Pensというバンドに、思いつきでSNS経由のメッセージを送ってみた。1時間もしないうちに返信があって、今夜、ライブの前に会うことに。展開が早い。何らかの縁が繋がっていくタイミングというのはこういうものだ。


台湾のバスは安くてもラグジュアリーなタイプが多く、長距離移動でもあまりストレスを感じない。

今夜のライブ会場のLEGACYがある、カルチャースペース華山1914文化創意産業園區のカフェで、メンバーの二人、サニーさんとビボさんと会う。突然外国人から「会いたい」とメールが来たら、普通は戸惑うものだ。なので、できるだけ丁寧に、今自分がここにいる理由と、Four Pensを沖縄で紹介したいということ、その具体的なアイデアを伝えた。サニーさんは日本語も堪能で、話は弾んでライブの開演時間の前には、7月に沖縄でライブをやる方向で話はまとまっていた。


台北の会場はLegacy。開場前から長蛇の列。

ADOY、第二夜。台北での集客は昨夜に比べると倍ぐらいにみえた。今夜も雷撃とManic Sheepが先に演奏する。昨夜の雷撃は二人編成(ヴォーカル+ドラム、ギター)だったが、今夜は、ギター、ベースにコーラスまで入ってまるで印象の異なるバンドに。見せ方で大きく変わるものだ。会場の音響のせいか、Manic Sheepもより良いサウンドに聴こえた。

ADOYの演奏は圧巻だった。ジャンルを超えて、曲ごとに様々な音像が繰り返し押し寄せてくる。アンコールの「Don't Stop」。キャッチーな鉄板曲で会場の熱量はぐんぐんと上がっていった。
終演後、CDのサイン会に立ち寄ってメンバーに率直な感想を伝えた。ボーカルのJuhwanに「どこかで会ったよね」と言われた。去年のLUCfestで彼らのライブは見たけど、話しをした記憶はないから多分人違い。最後に「沖縄でもライブをやれる機会を作りたい」と付け加えた。


ADOY、細やかに計算されたパフォーマンスが素晴らしかった。曲ごとにイメージがシンクロした映像がフィーチャーされる。映像も音楽の一部のように感じられる。

沖縄のバンドやアジアのインディーズバンドが、アジア各地を当たり前にツアーができる環境が作れないものかと考えている。個人的には、ここ数年の課題だ。沖縄でも可能な限り受け入れてはいるものの、ビジネスとして成立させていくためのハードルは高い。

SpotifyやApple Musicなど、サブスクリプションの広がりで、アジアのインディーズ・ミュージックは誰もが気軽に聴ける環境はすでに整っている。そこにどうリーチしていくのかということを誰もが模索している。私自身は沖縄でどういう風にファンベースを広げていくのかということが、最優先の課題だと考えている。サブスクの再生回数やSNSのいいねやフォロワーの数を、地道に伸ばすという作業は基本中の基本。ベースとなる数字は多くの人に見られているのだ。


よその土地で、どのようにファンのエンゲージメントを高めていくかということは大きな課題。その点でADOYは大きな成功を収めている。

6月、音楽カンファレンスに招かれて再度台北を訪れた。オフ日に彼らがライブを行うというので、会場を訪ねた。Tokyo Bikeという洒落た雰囲気の自転車屋のイベントで、リハーサルだけ聴かせてもらった。瑞々しくも爽やかな音楽に改めて感動した。


tokyobikeでのパフォーマンス。2019年6月

7月、Four Pens初の沖縄ツアー。正直、単独での集客は厳しいと考えて、アンサリーさんのライブのゲストとして2公演ブッキングした。さらにFour Pensをメインに、沖縄のアーティストが対バンで出演するライブをもう1本。生で聴いてもらえれば、彼らの音楽の素晴らしさが伝わる人も少なからずいるだろうと考えたのだ。

アンサリーさんとのライブ、初日どんな雰囲気になるのだろうと少し不安に感じていたのだが、杞憂だった。気づいたときには、楽屋ですでにセッションが始まっていた。Four Pensからの提案で、MONGOL800の「小さな恋のうた」を一緒に披露することにしたとのこと。ミュージシャン同士の、こうしたつながりが生まれる場面に立ち会えるというのは幸せなことだ。桜坂劇場と、がらまんホール、2つの会場で披露された少したどたどしい「小小恋歌」のコラボレーションは、大きな喝采を浴びた。沖縄のバンドとの対バンのライブも大いに盛り上がって、打ち上げは深夜にまで及んだ。


アンサリーさん、市川和則さん(ギター)と。桜坂劇場、2019年7月

コロナ禍にあって、イベントがこれまでと同じように開催できる状況にはなく、海外との行き来が自由にできるわけでもない。先の見通しを立てることさえ困難だ。何か動き出そうとするたびに、コロナの壁が立ちふさがる。
「あの日出会った沖縄が少しでも早く戻りますように」。Four Pensから送られてきた映像の最後には、そう記されていた。彼らが想う明日を私も待ちわびている。



【筆者プロフィール】



野田隆司(のだ・りゅうじ)

桜坂劇場プロデューサー、ライター。
1965年、長崎県・佐世保市生まれ。
「Sakurazaka ASYLUM」はじめ、毎年50本以上のライブイベントを企画。
2015年、音楽レーベル「Music from Okinawa」始動。
高良結香マネージャー。



前の記事TOKIOの危機は22年前から…...
次の記事三浦春馬さん 明かしていた「生意...