天然のクーラーを生かした鍾乳洞の古酒蔵 洞内には夢や願いを泡盛に託す”古酒ロマン”が広がっていた


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大自然が生んだ古酒蔵

9月4日(金)の古酒(クース)の日に先立ち、今週の週刊レキオでは、「古酒特集号」として古酒の世界に迫ります。

金武鍾乳洞内の古酒蔵で、古酒の瓶を持つ金武酒造常務取締役・奥間尚利(なおみち)さん。金武鍾乳洞では、金武酒造の関連会社・インターリンク沖縄が、鍾乳洞の一部区域を古酒蔵として利用し金武酒造の泡盛「龍(たつ)」をボトルキープできるサービスを行っている=8月6日 写真・村山 望

鍾乳洞の中にズラリと並ぶ泡盛の瓶―。ここは、金武町内の鍾乳洞。保管されているのは、金武酒造の泡盛「龍」だ。年間を通して約18~20℃に保たれた鍾乳洞を酒蔵とし、貯蔵された泡盛はまろやかな古酒になるまで静かに熟成し続けている。

金武鍾乳洞を訪れたのは、強烈な日差しが照りつける猛暑の日。しかし、洞内に入ると空気が一気に変化した。ひんやりとした空気が、ほてった肌に心地よく感じられる。洞窟は入口から地下深くへと続く。急な階段を下りていくと、泡盛セラーが所狭しと並ぶ空間が広がっていた。

案内してくれたのは金武酒造の常務取締役・奥間尚利さん(34)。人懐っこい笑顔で「ここは天然のクーラーのような感じ。約1万本の泡盛が貯蔵されています」と説明してくれた。

ボトルに夢を託して

奥間さんは中学の時に家業の酒造所を継ぐことを決意し、高校では野球部で汗を流しつつ勉学に励み、東京農業大学へ進学。卒業後に金武酒造で働き始め、泡盛一筋に歩んできたという。

泡盛セラーで保管されているのは、金武酒造の泡盛「龍」の瓶。貯蔵希望者が購入した泡盛を、関連会社のインターリンク沖縄が5年・12年の満期までボトルキープしてくれるシステムだ。

瓶には預け主の名前と預けた年、それぞれの預け主(オーナー)の夢や願いなどを書いたラベルが付けられている。「僕が東京農大に入学した時の泡盛もありますよ」と奥間さんが指差したラベルには、確かに自身の名前が記入されていた。

「県外のオーナーが7割ぐらいですね。満期を迎えたら連絡し、発送、現地受取、継続を選んでいただきます」

鍾乳洞内でのボトルキープサービスの開始は1988年(昭和63年)。インターリンク沖縄の代表取締役社長・豊川あさみさんが「金武町に観光客が立ち寄ってもらいたい」との思いからスタートさせたという。そのため、貯蔵の申し込みは現地受付のみに限っている。

鍾乳洞内で最初に泡盛が貯蔵された88年は昭和が平成へと変わった89年の前年。平成の31年間熟成された古酒は、令和初日に瓶詰めされ、「龍31年古酒」として酒類販売の喜屋武商店(那覇市、喜屋武善範社長)と連携して販売した。

鍾乳洞の内部には、通路に沿って泡盛セラーがズラリと並べられている

人と共に熟成する古酒

49年創業、ことしで71周年を迎える金武酒造。「昔ながらの泡盛酵母を使い、伝統的な造り方をしています」と奥間さんは誇らしげに話す。

製造年数を表記する古酒造りに力を入れており、生産量の半分を古酒貯蔵に充てている。さらに一般酒であっても「最低でも1年は貯蔵して香りを整えてから瓶詰めする」という。

「世界にはウイスキーやブランデーなどの熟成酒があるが、泡盛はお酒自体の熟成の力が強いのが魅力」。たるの香りなどによるのではなく、泡盛自身の力によりバニラやカラメル、ドライフルーツを思わせる甘い香りが育まれ、まろやかになるのが特徴だという。

「古酒ならではの香りとまろやかな口当たりは、アルコールと水の分子が長い年月を経てしっかり混ざり合って生まれるもの。それには長い年月が必要なんです」と力説する奥間さん。「沖縄では、子どもが生まれたお祝いに泡盛を贈りますよね。子どもの成長と共に熟成し、成人後に親と一緒に飲む。古酒は人と一緒に成長できるお酒です」と笑顔で話した。

通常は古酒蔵の見学ツアーも有料で行っているが、現在は残念ながら新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて休止中だ。今回は取材のため、感染予防対策を行ったうえで特別に見学を許可されたことをお断りしておく。感染収束後の見学再会を心待ちにしたい。

(日平勝也)


 

平成の31年間熟成され、令和の初日に瓶詰めされた「龍31年古酒」(写真は720㍉㍑)。

問い合わせは那覇市前島の喜屋武商店へ
【電話】 098-868-5270

古酒蔵でのボトルキープサービスに関する問い合わせ
【電話】 098(968)8581(カフェレストラン長楽内)

(2020年8月27日付 週刊レキオ掲載)