古酒からドライフルーツの香り!?奥深い古酒の香りの秘密に迫ってみた【島ネタCHOSA班】


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今回の島ネタCHOSA班は古酒の日スペシャル。「古酒CHOSA班」と題して、古酒の専門家にいろいろ質問しちゃおうという企画でお届けします。

熟成のメカニズムや風味の秘密など、まだまだ解明されていないことも多いという古酒。ですが、少しずつ化学的な分析も進んでいるようです。専門家を訪ねて、話を聞いてみました!

ドライフルーツの香り

お話を聞いたのは、各酒造所への技術支援などを行う沖縄国税事務所 間税課の主任鑑定官・相澤常滋(じょうじ)さん。実は相澤さん、2年前のレキオの古酒の日企画でもご登場いただいているんですよね。今回もよろしくお願いしまーす。

確か前回は、3年以上貯蔵したものが古酒と呼ばれるという法律上の定義、泡盛を熟成していくと甘くまろやかな風味になる傾向があるらしいこと、古酒化することでバニラやカラメルのような香りが生まれることなどについて教えていただいたと思うのですが…。

今回、古酒の風味を体験するため特別に用意してもらった古酒のサンプル群。中には、ドライフルーツ、カラメル、バニラなど特徴のよく現れた古酒のサンプルが入っています
相澤常滋さん

「はい。実はあれから、古酒の香りについて新しいことも分かってきたんです」

おおっ、何が分かったんでしょう?

「バニラやカラメルの香りとともに、ドライフルーツの香りが特徴的であるということです」

えっ、ドライフルーツ!? 

「沖縄国税事務所では、年1回泡盛鑑評会を開いて、審査員がいろいろな泡盛や古酒を評価しています。令和元年の鑑評会で、ドライフルーツの香りにも着目して評価したところ、特徴的に表れている古酒があることがわかりました」

論より証拠ということで、ドライフルーツの香りがよく現れた古酒のサンプルを用意してもらいました。グラスに古酒を注ぎ、香りをかいでみます。すると…。レーズンを思わせる芳醇(ほうじゅん)な香りが! 

「どのような成分が関与しているかはまだ分かっていませんが、貯蔵年数が長いものほど香りが強い傾向がありました」

なるほど、化学的にも古酒の香りの秘密が解明されつつあるのですね。

容器による熟成の差は

ところで、古酒を熟成させる容器には瓶と甕(かめ)、ステンレスがあると思いますが、やはり違いが出るのでしょうか?

「管理しやすいのは瓶やステンレスだと思いますが、『泡盛仕次古酒・秘蔵酒コンクール』で調べた結果、甕のほうがカラメルのような甘い香りの特性が現れる傾向があることが分かりました」

なぜなのでしょうか?

「カラメルの香りはソトロンという化合物に由来し、甕貯蔵の泡盛を分析してソトロンが検出された報告もありますが、どのように生成しているかは明らかになっていません。また、甕での熟成期間が長いといっても必ずしもカラメル香が強くなる訳でもないようです」

2020年泡盛の女王の金城希さん(奥)、東星香さんもテイスティング(風味の鑑定)にトライ

うーん、奥が深いですね。

「はい。古酒については分かっていないことのほうが多いんです。一般的に、古酒化すると刺激臭が抑えられまろやかになるといわれていますが、令和元年の泡盛鑑評会の官能評価では、新しい泡盛であってもまろやかなものもあるという結果も出ているなど、まだまだ研究のしがいがあって楽しみです」

ちなみに、先程からお話に出てくる鑑評会やコンクールなどのイベントとは…?

「沖縄国税事務所などが主催し、技術の向上を目的に県内の泡盛メーカーから古酒・一般酒の出品を募って審査員が評価するのが泡盛鑑評会です。結果は細かくフィードバックして、品質の向上に役立てています。

泡盛仕次古酒・秘蔵酒コンクールは、古酒の仕次ぎ方法継承を目的に、個人で仕次ぎをしている人などに自慢の古酒を出品してもらうもので、2018年から開催されています」

 

(2020年8月27日 週刊レキオ掲載)