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困りごとがあるからこそ、人はつながれる 100cmの視界から―あまはいくまはい―(80)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

新型コロナウイルスが出てきて、一気に世界が変わりました。友だちと遊びに行ったらだめなの? 教員採用試験や入試はどうなるの? 修学旅行は行けるの? 今まで当たり前だったことが急にできなくなり、みんな不安でいっぱいです。でもこの先が読めない生活は、障がいのある人の生活に似ていると感じるのです。

今年の夏は沖縄に帰れなかったので、八ヶ岳で川遊びをしてきました

障がいがあると、受験はさせてもらえるのか、合格したとしてもどんな配慮が受けられるのか、修学旅行はみんなと行けるのか―など何をするにも話し合いを重ねます。安全面が最優先され十分な学びが保証されなかったり、環境が整っていないため障がいのない人と同じことをするのが難しかったりします。話し合いすら持たれずに無理だと決めつけられ、できないこともあります。選択肢が少ない、前例も少ない、それが障がいのある人の毎日です。

子どもにも、私の骨の弱い障がいが遺伝すると思っていた私は、私がやってきたように、何事も話し合いをする覚悟で子どもを産みました。でも産んでみるとたまたま障がいがなかったので、彼らの選択肢の多さ、やりたいことに挑戦できる環境にびっくりするのです。保育園は空きがあれば入れるし、合わなかったら転園も考え、習い事もいくつか見学して行きたいところを選ぶことができます。

障がいがあったら、そうはいかなかったでしょう。受け入れてくれる保育園を探し、先生方と話し合いを重ね、やっと入れたら転園を考えることはなかなかないでしょう。だって受け入れてくれる場所が少ないのだから。習い事もバリアフリー面を考えると限られるし、障がいのことを理解し受け入れてくれるところもまだまだ少ないでしょう。やりたいことが簡単にできないのが当たり前、努力や試行錯誤が必須になるのが障がいのある生活。

今回の新型コロナウイルスで、障がいに関係なく、不便さや不安感を抱える人が多くなりました。リモートワークや飲食店のテークアウトが増えました。おかげで通勤移動が大変な障がい者は働きやすくなり、階段があり入店できなかったお店の味を楽しむことができるようになりました。障がいのある人も、ない人も、選択肢が増えて便利になったのです。皮肉にも希望も感じるこの状況。そんな今だからこそ、いろいろな人の生きやすさのために、どんどん変えていけるかもしれません。弱さや困り事があるからこそ、人はつながり合い、相手を思いやることができるのだから。

(次回は9月15日)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2020年9月1日 琉球新報掲載)