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言葉で気持ちを伝え合おう 100cmの視界から―あまはいくまはい―(82)


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骨折を繰り返し、思うように動けなかった私は、言葉を使い始めたのが早く、おしゃべりが上手な子どもだったそうです。今でも私の友だちは、私のことを、「うるさい」「よくしゃべる」と口をそろえて言います。当の私はそんなに話しているつもりはないのだけど(笑)。

そんな私も、骨折した時だけは静かにしていました。大声を出したり、泣いたりすると、その振動でより痛くなるからです。必死に痛みをこらえ、痛い、悲しいとは口にせずに静かに横になっていました。

代わりに、骨折をしていない元気な時は、少しでも嫌なことがあるとわんわんと泣き、楽しいときはうるさいほどにおしゃべりをし、喜怒哀楽が激しく、骨折した時にできないことを補っていた感じがします。

今年は人混みを避けるため、自然の中で遊ぶことが増えました

7歳と5歳のわが子たちは、怒って手を出して、けんかをする毎日。2人で笑いながらふざけながら、遊んでいるのかと思ったら、急にエスカレートしてたたいて、蹴って、ひっかいて、時には血が出ることも。手を出すのはもちろん悪いことですが、一回手を出すと、お互いの気持ちがどんどんヒートアップし、収まりがつかなくなってきます。疲れてたり、機嫌が悪かったりする時にはさらに激しくなります。

なので言葉で伝えることを何回も促しています。嫌なことをされたら「やめて」、思い通りにいかなかったら「嫌だ」「悲しい」、たたかれたらたたき返す前に「痛い」「やめて」と言う。気持ちを手でなく、言葉で伝え、感情をコントロールする練習を重ねるしかありません。きっと戦争をはじめとする戦いも、言葉でのやりとりがうまくいかず、誤解が起きて、攻撃がはじまり、エスカレートしていくのでしょう。気持ちを、言葉をどう操れるかは、とても大切なことだと痛感します。

「男の子なんだから泣かないよ」「男の子なんだから細かいことを言わないの」「女の子なんだからそんなに怒っちゃだめだよ」「いつも笑っている女の子がかわいいよ」と、まわりから言われると、素直に気持ちを表したり、言葉を使うことが苦手になったりします。気持ちを表したり、言葉にしたりすることは、誰にとっても大切なので、そんな呪いの言葉をかけるのを大人はやめたいですね。

このコロナ禍で、子どもも大人も、自分が思っている以上に頑張り、時には我慢し、疲れています。気持ちをコントロールできないときもあるでしょう。安心できる場所で感情を出し、言葉で思いを伝えながら、自分をいたわり、まわりも大切にしていきたいですね。

(次回は10月13日)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2020年9月29日 琉球新報掲載)