ハムの会社にスッポン!?オキハム広場の裏にはスッポンの飼育池が広がっていた【島ネタCHOSA班】


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巨大な牛と豚のオブジェが印象的なオキハム広場(読谷村)に、壁に「レストラン すっぽん館(やかた)」と書かれた建物がありますよね。友人が「あそこはオキハムが飼育したスッポンを出しているんだよ」と言っていたのですが、本当ですか? ぜひ調べてください。

(南風原町 はえるんるん)

愛称からハムのイメージが強いオキハム。正式名称は「沖縄ハム総合食品株式会社」で、ハム・ソーセージにとどまらず、琉球料理のレトルトパック、乾物、飲料など幅広い食品を手掛けています。ですが、スッポンとはあまりに意外?

常時約4万匹を飼育

半信半疑の調査員が電話で確認してみると…。

「はい、確かにすっぽん館では、オキハムが飼育したスッポンを提供しています」との答え。レストラン自体はオキハムの関連会社である沖縄黒糖が運営しているそうですが、スッポンはオキハムが飼育しているとのこと。

う~ん、牛や豚ならともかく、なぜスッポンを? 詳しく話を聞いてみようと、調査員は飼育現場を見学させてもらうことにしました。

国道58号沿いからも見える「レストラン すっぽん館」(現在休業中)。この裏手の飼育地で、スッポンを養殖しています

案内してくれたのは、オキハム水産部 課長の野原寛弘(ともひろ)さん。なんと、オキハムに水産部が…!?

野原寛弘さん

「はい。水産部は、スッポンを養殖するために立ち上げた部署です」と野原さん。

聞けば、同社の長濱徳松会長が滋養強壮のみならず、サプリメントの需要、また女性の美容をサポートするスッポンの可能性に注目。バイオ関係の学校を卒業した野原さんに声がかかり、県内での養殖事業をスタートさせたそう。

野原さんは、スッポンの養殖の経験はなかったものの、生き物を飼うのが好きで、趣味で魚類・両生類などを繁殖させていたそう。そんなところが会長の目に留まっての抜てきだったのですね。

スタートは2011年。九州の養殖場に見学に行き、翌年には試験的に千匹のニホンスッポンを飼い始めました。スッポンは半年ほどすると、見事に大きく成長。これはいけると手応えをつかみ、池を建設し本格的に養殖に取り組むようになったと言います。

スッポンの飼育池。読谷には22区画、本部には34区画の池があります。奥に見える小屋は卵を産む産卵小屋

13年には最初に育てた亀が産んだ卵もふ化し、繁殖に成功。16年から商品としての供給を開始し、17~18年ごろから安定して供給できるようになったといいます。

「数に変動はありますが、現在は、常時ニホンスッポン約4万匹を飼育しています。ピーク時は6万匹いたこともありますよ」。えー、そんなに! 調査員はオキハム広場裏手の飼育池を見せてもらいましたが、本部町でも飼育を行っているそうです。

沖縄はスッポンの楽園!?

「本土では、例えば静岡の浜名湖ではスッポンは出荷までに4~5年はかかりますが、温暖な沖縄では1~2年で出荷できます」

変温動物であるスッポンは寒さに弱く、水温が25℃を下回るとエサを食べなくなる、と野原さん。なるほど、温暖な沖縄ではエサを食べる期間が長いため早く育つのですね。

ところで、スッポンにはどう猛でかみつくと離れないというイメージがありますが…。

「いえ、実際はスッポンは臆病で、たまに甲羅干しに出てくるほかは、ほとんど砂の下にもぐってじっとしているんです。基本的に水の中ではかみませんし、地上ではかもうとしますが首が届くところに手を置かなければ大丈夫です。自分も実はかまれたことはないんですよ」。えっ、ちょっと想像と違いました。でも親しみがわいてきますね。

出荷を待つスッポン。写真ではバケツにかみついていますが、水の中ではかまないそう。サンゴ砂で育てられているので、甲羅もツルツルなめらか、翡翠色に輝いています。

出荷先は、食用では県内の飲食店やホテルなど。最近は、サプリメントの原料としての出荷も多いそうです。

「『レストラン すっぽん館』では、隣の飼育池で育ったスッポンをかなり安く提供しています」。メニューを見ると、すっぽん御膳が2000円、すっぽんそばは750円(税別)。スッポンをこの価格で食べられるのはうれしいですね! 現在はコロナウイルス感染拡大の影響で休業中ですが、再開したら調査員も食べに行きます!

(2020年10月8日 週刊レキオ掲載)