知って実践!子ども&権利を守る暮らし Vol.06 助産院ばぶばぶ院長・HISAKOさん 「性教育・最後進国のタブーを破る」 ☆えくぼママの沖縄子育て☆


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「いのちの授業」という、外部講師を招いた性教育の出張授業をご存知ですか?
県内すべての公立校に案内を出し、今年から講師としての活動をスタートさせたのがHISAKOさん。彼女は「子だくさん助産師」として有名で(なんと12人のママ!)、ご自身の子育て経験や医療現場でのリアルな話を、包み隠さず・笑いも交えて・明るく真剣に伝えてくれます。

出身は大阪。この春に家族そろって拠点を沖縄へ移しました。今年は新型コロナウイルス感染症によって世界が一変し、子どもを取り巻く状況は虐待、貧困、若年妊娠や中絶、ネット依存など、今まで表に出なかった問題が一気に表面化した年でもあります。

タブーとされる性の問題に真正面から取り組むHISAKOさんはなぜ沖縄を活動の場に選んだのか、また性教育と同義にある人権教育の重要性を教えていただきました。

【前回の記事はコチラ Vol.05
知って実践!子ども&権利を守る暮らし Vol.05 元教諭・モモさん
「自己肯定感」が負の連鎖を断ち切る鍵に ☆えくぼママの沖縄子育て☆

https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-1216998.html

―各校で「いのちの授業」を実施して、子どもたちの反応はどうでしたか?

おとなしい子が多いですね! 大阪では10年以上継続して、子どもたちの成長に立ち会いながら授業をしてきたので「それ前も聞いた〜」といったツッコミはあるし、彼らは遠慮なく自己主張してくるんです。沖縄ではきれいごと抜きでバンバン本音を言う、私のような専門家はいないんでしょう(笑)。先生方も含めて面食らっているのかもしれません。ただアンケートには「今までの授業で一番よかった」とあるし、授業前と後では子どもたちの表情が全然違う。伝わっている手応えはあります。

―ご主人のMARKさんと二人で、男女の違いを解説される授業は新鮮でした。

性や体の仕組みを学ぶときは自分だけではなく異性のことも、両方を知ることが大事です。たとえば肌を露出した服を女子が着るとき、彼女はそのファッションが好きで着ているのに、男子は「誘ってる」「やれる」と挑発のサインと解釈するケース。それを当事者の男性(MARK)が説明すれば納得しますよね。男女とも相手のことが分からないからネットを鵜呑みにし過ぎです。私は普段、助産師としてママからの相談を受けますが、夫からのモラハラには驚かされます。男だから偉いとか、妻にNOと言わせないとか。性的同意も知らず誤った情報に翻弄される人が本当に多い。

46歳で12人目を出産したHISAKOさん

―学校の性教育で正しい知識を教えてこなかった弊害と言えそうです。

性教育=セックスという勘違いですね(笑)。寝た子を起こす論もいまだにありますが、子はいつか必ず起きるんです。私が学校で活動を始めたのは2003年で、その頃から性教育バッシングが強まり急激に後退していきました。学習指導要領にあるのはメダカの受精ですよ。肝心なことを隠すから外国との差は開く一方です。性教育はコミュニケーションを学ぶことであり、生死を含めた生き方や人権を学習すること。私は主要教科として「包括的性教育*1」を取り入れるべきだと思います。性のことは自然には学べません。正しい知識を誰かが与えない限り。

国連子どもの権利委員会 *2 からも性教育を推進するよう勧告が出てますよね。

ネットで簡単にやり取りができる今、現実的に子どもが性搾取や性暴力、性虐待にあうリスクは高まっています。すべての子どもは性加害から守られる権利があり、いやなことはNOと言っていいんです。そのことは誰かが教えてあげないと分からないし、大人は性加害(虐待)から子どもを守る義務がある。私は大阪の教育現場で、園児からティーンエージャーまで年齢と発達に応じた包括的性教育を実践してきました。正しい性の知識があれば、性被害や望まない妊娠が減少することは証明されています。

―沖縄は若年出産などの課題が多いですが、それらも移住のきっかけですか?

率直に言うとアプローチする先をママから子どもにシフトしたんです。優先すべき相手は、いのちの授業を受けてくれる子どもたち。大阪の子には性教育のエッセンスを充分伝えてきたし、私以外の講師や助産師もたくさんいます。なので情報も人も不足しがちな沖縄で、私の経験を提供したいと思ったんです。もし経済的な理由で知識が得られないなら、それこそ子どもの権利侵害。お金じゃないんです。呼んでくれる学校へはどこにでも行くし、予算がなければ無償でもいい。子どもたちの自尊心を育てる手伝いをしたいと強く願っています。

★注釈
*1 包括的性教育
性をセックスや出産に限定するのではなく、性をとおして人との関わり方や相手の立場を考えることも含めた性教育を指す。そこでは科学的に正確な情報を幼少期から文化・年齢に応じて与えながら、子どもたち自身が考え、また様々な考え方にふれることが重要なポイントとされている(「国際セクシャリティ教育ガイダンス」より)。

*2 国連子どもの権利委員会
子どもの権利条約の実施状況を国際的にチェックしている機関。年に3回スイスのジュネーブで会合を持ち、各国から定期的に提出される報告書などをもとに、条約の実施状況の審査・検討を行なう(子どもの人権連ホームページより)。

 

★子どもの権利条約(全54条)を読もう!
日本ユニセフ協会
https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig_all.html

★子どもの権利を考えるオススメ本
 『Q&A 里親養育を知るための基礎知識』
 編著:庄司順一
 出版社:明石書店
攻撃的、衝動的な子どもの背景に見え隠れする虐待や愛着障害の影。事情を抱えた子どもの支援制度、対応策、権利擁護などが幅広く学べる。

(えくぼママライター やけなみわ)

 

☆ プロフィル ☆

やけなみわ

神奈川県出身の二児の母。元編集者・ライター。現在は小学校のPTA活動を中心に、子ども食堂のボランティア、平和・環境活動、親子英語クラブの運営に携わる。趣味は観劇。旅行。スキューバーダイビング

 

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