「アートの裏方として10年、20年、30年先まで残る仕事を心がけている」ー本村ひろみの時代のアイコン(44) 内間直子(アーツマネージャー)

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久しぶりの青空に思わず窓を開け放して音楽を聞く。
音楽を聞きながら簡単なストレッチをして部屋を片付けたら出かけよう。
見たかったあの展覧会へ。行きたかったあのイベントへ。
それが気になるあの人の企画となれば、なおさらだ。


ギャラリーレミネアにて二人展の作品の一部を3月頃まで展示販売中

アーツマネージャー内間直子さんの人懐っこい笑顔は、アート作品の前で緊張した気分を和ませてくれる。
以前、彼女はギャラリーのマネージャーをしていた時、展示を見終わった来場者によく感想を聞いていたそうだ。感想を聞くと、他人の視点で新たに作品を見直し、作品をさらに知ることができる。いろんな人たちが自分の感想を話し合いディスカッションの場になると、アートはがぜん面白くなる。そして意見交換をすることは、作品の魅力を引き出す見せ方を知るうえでも大切な時間だった。

「アートはコミュニケーションの一つなんです」と内間さんは言う。
「ヨーロッパではアートは生活に身近で、敷居が低く、近寄りやすいもの。もっと沖縄でも間口が広くて質の高い展覧会などを企画していきたい。」
そんな思いが彼女を動かしている。

内間さんは沖縄市の出身。
5人きょうだいの末っ子で、うえのきょうだいたちが自立してやっている姿をそばで見て卒業したら当たり前のように海外へ行った。学生ビザで働くことができたイギリスへ。最初はワーキングホリデー気分で1年の予定だったが、結局13年の滞在となった。自己確立の大切な期間をイギリスで過ごし、沖縄で生活していた時より多くの社会経験を積んだ。なので沖縄へ戻ってきた時、それまで気づかなかった物事に疑問を持つようなったそうだ。彼女はそれを「逆カルチャーショック」と言って笑った。しかしその眼差しは今の仕事に活かされている。


Soundscape Okinawa 自然を舞台に心地よい響きを奏でるクリスタルボウル奏者の加納由美さん(仲間勇太撮影)

Soundscape Okinawa どこからともなく聞こえてくるフルートの音色で魅了した金城まみ子さん(仲間勇太撮影)

内間さんはイギリスの大学で写真を学び、将来はフォトグラファーになりたいと思っていたそうだ。英紙ガーディアンのStudent Media AwardsのPhotographer of the Yearの5人にも選ばれた。写真のテーマはドキュメンタリーの分野で、さまざまな人種の家族模様をポートレートにしたのが評価された。その審査員にはイギリスの雑誌『Dazed & Confused』で活躍していたRankin(フォトグラファー)もいた。同誌や同じくイギリスの雑誌『iD』、日本の雑誌『Studio Voice』にビジュアル的要素の影響を受けていた彼女はとても嬉しかったそうだ。

しかしその後、自身が撮影をするより写真展やイベントをプロデュースするようになる。

内間さんは最も尊敬する写真家・比嘉康雄氏の作品に心を動かされ“沖縄の人が撮った沖縄”を海外で紹介したいという思いがあった。しかしすでに逝去している比嘉さんの写真展の開催はさまざまなハードルがあり断念。同じく感銘を受けた石川真生さんの『沖縄ソウル』という自伝と作品を紹介した本をもとに真生さんにアプローチをし、70年代から2010年頃までの作品の集大成として「沖縄ソウル」展をロンドンで企画、開催した。

「当時、欧州で知られていた沖縄を撮った写真は、東松照明さん、森山大道さん、荒木経惟さん、北島敬三さんなどの写真家によって撮られたもので、沖縄出身の写真家が紹介されたことはほとんどありませんでした」。それは予想以上の反響となった。
展示の見せ方には工夫した。説明は少なくしてできるだけビジュアルがメインになるように。展示したモノクロの仲田幸子さんの写真は人々の注目となった。
劇場や演劇文化が根付いているイギリスで、沖縄の演劇やその舞台裏で撮影された仲田幸子さんの写真は人気を集め、後にアメリカのヒューストンの美術館に収蔵されたそうだ。

イギリスでは歴史に触れるものにみなが関心を寄せる。眠っていた沖縄の古い写真集(70年代〜90年代)を掘り起こしスポットライトをあてたことで、世界的に有名なコレクターや研究者たちから反響があった、彼女の企画はロンドンの近現代美術館「テートモダン」のキュレーターも会場に足を運んでくれたそうだ。
沖縄に戻って来てからは海外の映像作家や写真家の通訳やコーディネーターもされている。

さて、現在の内間さんの活動は幅広い。
まず4年前に“ESM-OKINAWA”を立ち上げた。
代表を務めるESM-OKINAWAでは、バイリンガルコーディネート及びセールスエージェントを担い、アーティストの海外での活動のサポートをしている。
1月25日から29日の期間「アートマネージメント講座」を開催予定しているそうだ。https://www.facebook.com/events/745478099438937/


Soundscape Okinawa 自然に恵まれた糸数城跡で音を聴きながら自然の風景や文化財を楽しむイベント。ジャンルを超えた新しいスタイルのサウンドアートイベントを体験

また、2020年3月にAIO(Art Initiative Okinawa)を立ち上げ事務局長を努めている。AIOはコロナ禍の今だからこそ必要な、国内、海外とダイレクトに繋がることのできるオンライントークイベントなどを開催。
これまでに「アートの持続性について参加者とともに考える」などさまざまなテーマを取り上げている。

「ネットワーク(人脈)」、「ダイアローグ(対話)」、「プラットホーム(実践する場)づくり」

この3つの柱を軸にAIOは展開していく予定だ。今月末には沖縄を中心に、沖縄に関心のある国内外のアート関係者とのクロストークを企画している。
そして2月には第2回「社会に届けるアート」講座とシンポジウム開催予定。
詳しい情報はサイトをチェックしてほしい。


二人のアーティストがInstagram(対話)を始めた。日々のささやかな気付きの共有や、作品制作へのインスピレーションなど、二人の会話から生まれた作品展

 昨年の暮れに展覧会(Dialogue日々を彩るもの MIREI齋悠記 二人展)を企画し、その後すぐに開催した、城(グスク)の空間を音でインスタレーションした野外イベント(Soundscape Okinawa)も共同プロデュースした内間さん。どう考えてもめっちゃ忙しそうなんですが、大変なのよーと言いながら思いのほか本人はひょうひょうとして見えるから不思議です。




【内間直子(うちま なおこ)プロフィール】


内間直子(うちま なおこ)

1974年生まれ、沖縄市出身。ESM Okinawa代表、Art Initiative Okinawa(AIO)事務局長。アーツマネージャー、インディペンデントキュレーター。英国 Westminster Kingsway College にて、写真、アート&デザインを専攻。
2009年、英国で沖縄の芸術文化を総合的に紹介する「ロンドン沖縄DAY」を企画発案。
2010年、石川真生写真展「沖縄ソウル」を企画し、テートモダンの初代写真キュレーターSimon Bakerや世界有数の写真集コレクターとしても知られる写真家Martin Parrから評価を受ける。
2011年に帰国後、沖縄市一番街周辺のアートプロジェクト「沖縄クリエイターズビレッジ」の広報や版画家名嘉睦稔のボクネン美術館やアカラギャラリーのマネージャーを務める。OCVB沖縄フィルムオフィスの海外プロモーションを経て、映像制作のコンサルティング、撮影コーディネートなどを行う。また、県内新聞等で執筆するなど、さまざまなアートプロジェクトの企画、制作、広報などに携わっている。

【HP】https://www.esm-okinawa.com/
【Facebook】https://www.facebook.com/naokouchima
【Instagram】https://www.instagram.com/naokouchima/




【筆者プロフィール】


本村ひろみ

那覇市出身。清泉女子大学卒業、沖縄県立芸術大学造形芸術科修了。
ラジオやテレビのレポーターを経てラジオパーソナリティとして活躍。
現在、ラジオ沖縄で「ゴーゴーダウンタウン国際通り発」(月〜金曜日 18:25~18:30)、「 WE LOVE YUMING Ⅱ 」(日曜日 19時~20時)を放送中。



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