新鮮オーガニック野菜をお届け♪ 沖縄の新聞販売店が「ベジんちゅ」宅配に込めた願い


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

「こんにちはー。『ベジんちゅ』のお届けです」

毎週水曜日、箱詰めされた無農薬・有機野菜を届ける國吉利彰さん、優子さんの明るい声が玄関先に響きます。琉球新報真地団地、寄宮二、仲井真の3販売店を担う店主夫妻です。

琉球新報販売店有志は2020年5月から、オーガニック島やさいネットワーク「ベジんちゅ」と連携して、那覇市内の会員宅への配達を担っています。
 

沖縄の生産者を地域で支える

ベジんちゅ宅配ボックスは、3000円と2000円の2種類(送料は別途)で毎週と隔週コース。季節によって野菜は変わります。

一般的に農家さんは、天候や収穫量によって収入が不安定になりがちです。環境や健康のことを考え、無農薬や有機農法で野菜を育てる生産者はなおさらです。

「安全・安心な野菜を作ってくれる沖縄の農家さんを守りたい」

そんな思いから2020年1月にスタートしたのが、無農薬・有機野菜の定額購入サービス「ベジんちゅ」です。消費者が生産者を支える農業の仕組み「地域支援型農業(CSA=コミュニティー・サポーテッド・アグリカルチャー)」を沖縄で広げたいと、那覇市のオーガニックレストラン「浮島ガーデン」の中曽根直子さんと、西原町の有機農家「新島ファーム」の平良将豊さんが中心となってスタートしました。

「ベジんちゅ」では収穫体験や料理教室なども開催しています(新型コロナウイルス感染拡大前の写真です)。

「沖縄の食糧自給率はカロリーベースでわずか27%(2018年度)。カロリーの高いサトウキビを除くともっと低くなります。災害などで物流が止まったら、沖縄はたちまち食糧不足になってしまう」

沖縄の「食」にまつわる現状を憂慮する直子さん。

「沖縄の有機農家は約80軒ほどしかいない。農業だけでは生活できないからです。農業を続けるためにアルバイトをして生計を立てている青年もいます。農家さんに安心して野菜を作り続けてもらう仕組みを拡げたいんです」

未来のために「子ども支援」も

ベジんちゅから届いた野菜で美味しい料理を作ってくれる「ゆいまーる広場」さん(那覇市)。

「ベジんちゅ」のもう一つの特徴は、「子ども食堂支援」です。定期購入を続ける会員たちが、購入金額の1割分の野菜を沖縄県内の子ども食堂に寄付しているのです。

全国的に課題となっている「子どもの貧困」。統計で見ると沖縄の「子どもの貧困率」は29・9%(2015年度)で、全国の2倍近く。3人に1人が貧困状態にあると言えます。

子どもたちが安心して過ごせる「子ども食堂」などの居場所づくりは、心ある人々の尽力により広がっていますが、行政の財政支援は十分とはいえません。
そんな中、ベジんちゅは「美味しくて安心な野菜を子どもたちに食べてもらいたい」と有機野菜の寄付を続けてきました。スタートから約1年。2020年12月までに、総額30万6200円分の野菜を届けたそうです。

ベジんちゅ事務局を務める新島ファームの平良将豊さん(後列左)。南城市「みんなのいえ」へもお届けしています。

「地域を良くしたい」と願い配達

ベジんちゅをスタートした(左から)中曽根直子さん、新島ファームの平良将豊さん、那覇市内の宅配を担う國吉利彰さん

ベジんちゅの会員宅への宅配は当初、生産者である「新島ファーム」の平良さんが担っていましたが、慣れない配達業務と生産活動の両立は、思った以上に大変だったそうです。

そこで、2020年5月から、地域に根差した配達網をもつ新聞販売店とタッグを組むことになりました。同年7月から那覇市内は主に、琉球新報の販売店主・國吉利彰さんご夫妻が配達しています。

自らも3人の子育て中で、PTA活動など地域貢献活動も積極的に続けている國吉さん。「『ベジんちゅ』は沖縄や地域を良くする取り組みだと思う。お客さんと仲良くなれるのも嬉しいですね」と笑顔を見せます。

台風後には「未来の豊作チケット」も

沖縄の有機農家を支え、子ども食堂の支援にもつながる「オーガニック島やさいネットワーク『ベジんちゅ』」は、「沖縄をより良くしたい」「誰もが暮らしやすい沖縄に」と願う会員によって支えられています。

2020年9月の台風後には野菜不足が深刻となり、定額分の野菜が確保できない事態になりました。事務局は悩んだ末に「地域支援型農業」の理念に沿って不足分の野菜を後日届ける、「未来の豊作チケット」を〝発動〟しました。

その結果、農家さんへの支払いはそのまま維持でき、野菜が潤沢に収穫できるようになった冬場に、チケット金額分の野菜をプラスでお返しする、という画期的な取り組みも実現したのです。

〝嬉しさの巡りの輪〟に喜びも

ベジんちゅ会員の糸数華恵さん(右)に、野菜を届ける國吉利彰さん・優子さん夫妻

ベジんちゅを利用する糸数華恵さんも、その理念に賛同する1人です。

「野菜が少なくなった時、もちろん物足りなさを感じることもあったけど、『農家さんたち、今は大変なんだな』と知ることができました。初めは生産者支援や子ども食堂支援の取り組みを知って、頭で考えていいな、と思って利用を始めました。でも今は、実際に食べて美味しいし、体が喜んでいるなと感じるから続けています」

食べる喜びはもちろん、「他の誰かのサポートにもつながることも嬉しい」と笑顔で語る糸数さん。

「ベジんちゅを続けることで〝嬉しさの巡りの輪〟の中に自分がいるのも喜びです」

(レポート・佐藤ひろこ)

◇オーガニック島やさいネットワーク「ベジんちゅ」の問い合わせ、申し込みはこちらのサイトから↓
https://ecsp.tsuku2.jp/viewDetail.php?itemCd=50622200255062

◇浮島ガーデンのサイト↓
https://ukishima-garden.com/