prime

離れて住んでいるからこそ大切にしたい 暮らしの中に沖縄の言葉、食文化 100cmの視界から―あまはいくまはい―(90)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

息子に「ママ、最近よく方言を話すよね」と言われました。私は眠いときやぼーっとしているとき、つい方言が出てしまうのですが、それが増えたようです。年末年始に家を大改造し部屋がきれいになり、念願の自分の部屋を持つことができたので、リラックスしている時間が多くなったのかもしれません。

ヘルパーさんに家事をお願いするとき「てぃーち、たーちでいいよ(1、2個でいいよ)」「これをあちらせて(これを温めて)」と言ってしまったり、子どもとテレビを見ながら「あれはヤナーだよ(あの人は悪い人だよ)」と言うことがあったり。そして友だちが体を壊した話を聞くと「ちゅーあたいだったね(ひどくなって大変だったね)」と声掛けをしてしまいます。私の実家はそこまで方言を使っていないと思っていたのですが、私にも無意識に染みついているようです。三つ子の魂百まで、ですね。

沖縄を離れて住んでいるからこそ、沖縄のことを大切にしたいと思う毎日です。クーブイリチーやヒラヤーチー、ポーポーの食べ物に始まり、タンカーユイエー、沖縄のわらべ歌、お盆のウチカビ、ガジュマルやキジムナーの話、そして戦争のことなど、子どもに伝えたいことはたくさんあります。 

先月は沖縄の母がムーチーを送ってくれ、年の数だけつなげて飾り、ヘルパーさんにもお裾分けし、みんなでおいしくいただきました。私はムーチーを包む葉の月桃の香りも花も大好きで、11年前の結婚式では、月桃のモチーフを型染めした紅型のウエディングドレスを作ったほどです。ムーチーを食べながら、子どもといろいろな話ができるのがうれしいです。

年の数だけムーチーを飾りました

また米国カリフォルニア州に留学していた時、中華系のスーパーで、豚の顔の皮やマチカジのようなカラフルなお菓子を見つけてびっくり! 沖縄の市場にいるかのような気分になりました。沖縄は改めて中国の影響が大きいと実感しました。沖縄から離れて生活しているからこそ、沖縄のことに気付き、好きになり、誇りを持つようになったのです。「伊是名」という名前も、私のアイデンティティーの一つで、私にはなくてはならないものです。だから夫婦別姓を通すため、事実婚をしています。

わが子たちが沖縄に住むことはないかもしれないし、私がまたいつ沖縄に戻れるかは分かりません。でも自分が好きなこと、誇りに思うことはずっと大切にし続けたいです。

(次回は2月23日)

伊是名夏子

いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。

 

(2021年2月9日 琉球新報掲載)