増えるアジア人へのヘイトクライム 自分が差別主義者にならないためのポイント -モバプリの知っ得![123]


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先月16日、アメリカ・ジョージア州でアジア系女性6人を含む8人が銃殺される事件が発生しました。その他にもアメリカ国内でアジア系市民に対するヘイトクライム※1が多発し、アメリカ大統領、国連事務総長などが「差別は許さない」と声明を出す異例の事態になっています。

人種、宗教、肌の色、民族的出自、性的指向、性別、心身の障害など変えることができない属性への犯罪のことをヘイトクライムと呼びます。
昨年、新型コロナウイルスの最初の流行が中国を含むアジア圏だったことから、欧米でアジア系市民に対する差別が広がっていました(トランプ元米大統領も、新型コロナウイルスのことを「チャイナウイルス」と呼んでいたことは記憶に新しいですよね)。

自分たちとは違う文化や人種の人たちへの(無知から発生する)偏見が差別へと変わり、そしてヘイトクライムへと化けます。差別の言葉も人を深く傷つけ、自ら命を絶ってしまうところまで追い込むこともありますが、今はそれに加えて直接的な暴力を加えている段階まできています。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

この現象は、インターネットの特性とリンクしている可能性があります。というのも、インターネットでは誰でも自由に意見を書き込むことができますが、その結果差別的な言動も多く投稿されています。SNSは差別的な投稿を禁止していますが、削除が追い付いていないので結果的に投稿が残っています。

さらにSNSなどは自分と近い考えの人が集まりやすい「エコーチェンバー現象」※2との相性がよく、差別的な考えが強化されていくなどの問題もあります。その結果、偏見から差別、さらにはヘイトクライムもスピーディーになってしまうのです。

このヘイトクライム問題は、昨年アメリカで黒人男性に対する暴行死をきっかけに、世界中に広がった黒人差別解消を訴える運動(ブラック・ライブズ・マター)が起こりました。日本でも在日コリアンの生徒が通う学校が襲撃されるなど、ヘイトクライムは世界中どこでも起こりうるし、どんな人でもターゲットになる恐れがあります。

また、自分自身が差別主義者にならないためにも、多様な情報を手に入れ、バランスを取る意識が必要になります。さまざまな地域の文化に触れ、直接的な国際交流などで理解を深めることも有効です(ただし、相手を「○○人」という属性だけで友達になろうとする態度は「思いやり差別」につながるので、こちらもまた注意が必要です)。

 ※1 ヘイトクライム… 憎悪犯罪。人種・宗教・性的指向など、変えられない属性に対する差別から発生する犯罪、暴力。アメリカではアフリカ系アメリカンをターゲットとしたヘイトクライムに抗議する「Black Lives Matter運動」が昨年盛り上がりました。日本でも、在日コリアンの通う朝鮮学校が襲撃されるヘイトクライムが度々発生しています。

 ※2 エコーチェンバー現象… 小さな部屋で自分の声が反響して大きくなる様子を表現した言葉。ネット上で似た考えの人たちと交流を繰り返すことによって偏った意見が増幅される意味です。例えば、ゲーム好きの人たちとだけSNSで交流をしていると「世の中の人全てが毎日ゲームをやっている」と勘違いし、結果的にどんどんゲームにのめり込んでいく現象です(ゲームはいろいろなものに置き換えることができます)。

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」4月4日付けでも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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