大坂なおみも“うつ”に…専門家勧める「期待に応えない生き方」


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(写真:アフロ)

「大坂なおみ選手(23)は、ツイートでは“depression”という言葉を使っています。この言葉が医師から診断されたうえでの“うつ病”なのか、気分が沈み込んでしまうという意味での“うつ状態”ということなのかは現時点ではわかりません。しかし大坂選手が繰り返し襲ってくる自信喪失という苦悩と必死に闘っていることは伝わってきました」

そう語るのは、立教大学教授で精神科医の香山リカさん。全仏オープンを棄権した大坂選手。5月31日に彼女が自身のツイッターに投稿したメッセージが波紋を広げ続けている。

「'18年の全米オープン以降、長い間“うつ”に苦しんでおり、その対処にとても悩まされてきました」

スポーツ紙記者は語る。

「彼女が語るように、'18年8月に全米オープンで優勝してから、プレーヤーとしての彼女への期待は跳ね上がりました。また競技で実績を示さなければいけないだけではなく、彼女は世間から求められる“キャラ”も維持し続けていかなければならなかったのです」

大坂は「人前で話すことが苦手で、世界のメディアに向かって話す前には大きな不安の波に襲われる」ともつづっている。

この点について、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授の碓井真史さんはこう語る。

「会見などで、みんなが喜ぶような言葉を考えなければいけないということが無意識のうちに重圧になってしまったのでしょう。“うつ状態”になってしまう人は、基本的に“真面目で頑張り屋”なのです。もし彼女が試合も会見も“適当に”対応できる人であれば、こんな状況にはならなかったと思います。

もちろんうつ病とは異なりますが、5月26日に適応障害であることが公表された深田恭子さんも“真面目すぎる”ために発症したと考えられます」

くしくも同時期に症状を公表した大坂と深田。香山さんによればコロナ禍により、うつ病や適応障害の症状に悪影響が及んでいるという。

「これまで症状と折り合いをつけながら仕事や家事を続けてきた一般の患者さんたちも、限界を迎えています。ふだんであれば旅行をしたり、気の合う友人と飲食をしたりして気分転換をはかることもできたのでしょうが、コロナ禍のためにそうした行動も制限されています。ストレスをやり過ごすことができなくなり、うつ病を発症しやすくなっているのです」

■心折らないためには“スーパー主婦”をやめること

適応障害といえば、香山さんは'04年7月に病名が公表された皇后・雅子さまを見守り続けてきた。

「皇太子妃(当時)・アスリート・女優と、立場は異なりますが3人の女性には共通点があります。それは“期待される役割を持ち、さらにその期待に応えるために努力を惜しまない人柄”ということです」

発症したのは雅子さまが40歳ごろ、深田が30代、大坂が20代。一般的には女性のうつ病を含む気分障害の患者数がいちばん多いのは40代だ。

「40代は女性として子育てが一段落し、『これから自分らしく生きるためにどうするか』と、自分に向き合う年齢です。また主婦であれば、同世代でキャリアを形成して活躍する人との比較などもストレスとなるケースもあります」(香山さん)

では、コロナ禍のなか“心が折れない”ために、私たちはどうすべきなのだろうか? 碓井さんはこんなアドバイスを。

「主婦の方でうつを発症する人も多いです。たとえ気持ちが落ち込んでいても、夫や子供のためにごはんを作ったりしなければならないですし、“逃げ場”がないからです。わかりやすい症状が“不眠”ですね。眠れないとか、逆に寝ても寝足りないという症状が1週間続くようであれば、医師に相談してください。

また、そうなるまえに“スーパー主婦”をやめることです。仕事や家事をきちんとこなすことはやめて、“手抜き”をしてください」

そして香山さんはこう語る。

「“期待に応えなければいけない”という気持ちを捨て、自分を追い詰めないことです。 周囲の評価が下がることを恐れてはいけません。自分を守るためには、何か期待されたり、頼まれたりしても、『今日は無理です』『それはできません』と言うことも必要なのです」

“手抜き”“期待に応えない”……、それらの決断が自分、ひいては家族を守ることにつながるのだ。

「女性自身」2021年6月22日・29日合併号 掲載

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