健康維持も重要!年金生活で破綻しないための生き方&制度


社会
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「備えあれば憂いなし」とはよくいうものの、いったい、いつ、何を、どれくらい備えておけばいいかというのは意外にわからない。そこで、これから老後を迎える女性に必要な「備え」を解説ーー!

「長年、家計相談を受ける中で、思うようにお金を貯められなくなったという50代が増えている」というのは、ファイナンシャル・プランナーの深田晶恵さん。

「税金や社会保険料がアップしているので、手取り収入は年々減少の一途をたどっています。さらに、長引く超低金利により、銀行にお金を預けても利息でお金を増やすことができなくなっています。そこにきて結婚、子どもを産む年齢が遅くなってきているので、60代になってもまだローンの返済が終わらない、という人が意外に多いのです」(深田さん・以下同)

高年齢者雇用安定法が改正された’13年以降は、会社員は60歳を過ぎても働くのが当たり前になってきたが、その実情はあまり認知されていないことも。

「60歳以降、再雇用で働く男性は増えていますが、妻の側は、収入が大幅にダウンするとは思っていないケースも多く見られます。中には現役時代と同じ給与水準だと勘違いしており、振り込まれた給料の額があまりにも少ないので、あわててしまったという話も。会社員である夫の定年後、収入が激減することを知らないで、現役世代と同じ生活を続けていると、老後破綻に陥ってしまいます」

夫が65歳を迎え、始まる年金生活。年金生活と聞くと、なんだかわびしい気分にもなるが、もしまだ夫婦ともに働き続けることができるのなら、年金受給を先延ばしして“年金を増やす”ことを勧めたい。

「’22年からは、年金の受給開始年齢が75歳まで繰り下げられるようになります。もし65歳以降も働いて収入があるのであれば、受給を繰り下げて、年金を増やすことも視野に入れてみましょう。1カ月繰り下げるごとに、年金額は0.7%ずつ増額されます。増額率は繰り下げ期間に応じて変わりますが、たとえば65歳で年金が年間200万円もらえる人が、70歳まで繰り下げると284万円、75歳まで繰り下げると368万円にもなります」

65歳まであまり貯蓄ができなかったという人は、働けるうちは働き、年金を繰り下げることで“長生きリスク”に備えよう。

ただ、ここで気をつけたい点がある。夫が65歳のとき、年下の妻が受け取れる「加給年金」が、老齢厚生年金を繰り下げてしまうと受け取れなくなってしまうのだ。

「『加給年金』は夫が会社員で、かつ年上の場合に限ってもらえる年金です。夫が厚生年金に20年以上加入しているなど一定の要件を満たしていれば、夫は妻が65歳になるまで受け取れますが、妻のほうが年上の場合は、夫は加給年金はもらえません」

ちなみに、加給年金の金額は定額の年間22万4,700円に、特別加算額がプラスされる。妻の生年月日が1943年4月2日以降なら、特別加算の額は年間16万5,800円(’21年度)となり、あわせて39万500円が受け取れる。

「老齢厚生年金を65歳から受け取ると、加給年金がもらえます。年金を増やしたいのなら、老齢基礎年金だけの繰り下げを。女性は男性よりも長生きするので、妻の年金も繰り下げておくと長生きリスク対策になります」

また、忘れてならないのは「病気・介護にかかるお金」が増えてくること。老後の蓄えを食いつぶす不測の出費を減らすためにも、健康維持も必須科目だと心得るべし!

「70歳までは医療費の窓口負担は3割です。高血圧や糖尿病など慢性疾患にかかると、薬を定期的にもらいに行くために通院しなくてはならず、医療費・薬代の出費が毎月続くことになります。ですが健康を維持できれば、生活習慣病を防ぐだけでなく、出費を抑えることができるのです」

現在、70歳から74歳までの人は2割(現役並み所得の人は3割)、75歳以上の後期高齢者は1割負担となっている医療費の窓口負担だが、’22年度後半からは、75歳以上で収入が200万円以上(夫婦で320万円)の人は2割負担になる。

医療費の窓口負担は増える傾向にあるので、健康で働き続けられるように日ごろから注意を払いたい。健康と収入の両方を得られるのが理想的だ。

健康維持にはシニア向けの健康教室やサークルなどもあるが、手っ取り早いのはウオーキング。梅雨の時季はなかなか外には出られないかもしれないが、雨が上がったときを見計らって近所を歩くことからでも始めてみよう。

そうはいっても病気で入院することは誰にでもある。そんなときのために、健康保険の高額療養費制度を忘れずに。

「高額療養費制度では所得区分に応じた限度額があり、超過分は後日払い戻されます。たとえば、大腸がんの手術で3週間入院して、医療費(10割分)が100万円かかった場合。窓口負担が3割で30万円支払ったとすると、計算式にあてはめて差額の21万円が高額療養費として払い戻されます。ただし、原則として申請することでお金が戻ってくる制度です。払いすぎた医療費や介護費も戻ってくる制度もあるので、面倒を思わずに必ず申請しましょう」

「女性自身」2021年6月15日号 掲載

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