「何年も履けるのが革の良さ」 革職人が語る”ネオ島ぞうり”の魅力 


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世界に一つだけの革ぞうり

 

特大の「革ぞうり」と代表取締役の池田崇(たかし)さん 写真・村山望

本部町山川、美ら海水族館からほど近い場所で革製品の製造・販売をする「株式会社 革人(かわんちゅ)」。店頭には主力商品の「革ぞうり」をはじめ、財布やキーケース、印鑑ケースなどの革製品が並ぶ。また、使わなくなったランドセルで小物を作る「ランドセルリメイク」も好評だ。もとぶ牛や琉球藍など本部町の素材を生かしながら、魅力ある商品作りを手掛ける同社代表・池田崇さんに話を聞いた

大阪府出身の池田さんは、地元で弁当屋を経営していたがなかなかうまくいかず、好きだった沖縄料理を学ぼうと2006年に来沖。県内の飲食店で働きながら沖縄料理のレシピを覚え、大阪で沖縄料理店を始めるつもりでいた。ところが3カ月後、バイクで事故を起こしてしまい鎖骨が折れ、手術やリハビリのため大阪に帰省した。

池田崇さん

しばらくして沖縄へ戻るが、まだ仕事はできない状態だったのでリハビリを兼ねて、以前から興味のあった革細工教室へ足を運んだ。そこで最初に教わったキーケース作りが楽しくなり、商売につなげようと考えた。

「そんな簡単なもんじゃない」と親には反対されたが、池田さんは革製品の商売を始めようと決意。教室に通い始めてから1年足らずで、本部町に1号店となる革製品の店をオープンした。その後、琉球村や北谷のデポアイランドで2号店と3号店を出店。現在は、2011年に移転リニューアルオープンした1号店のみに絞り、今年で14年目を迎える。

革ぞうりでマラソン

店頭には、町特産の「もとぶ牛」をはじめ、エイやトカゲ、ニシキヘビの革で作った主力商品である「革ぞうり」が並ぶ。独学で作り上げた池田さんのオリジナルで、もともと履いていた「島ぞうり」の表面に革を貼ってみたところ、履き心地が良く「絶対売れる!」と確信し、商品化した。

もどぶ牛の革ぞうり(右から4番目まで)と、ニシキヘビ、エイの革ぞうり。一足5,400円~10万円(革の質による)

「革ぞうり」は、基本的にサイズや色、素材などを自分で選べるフルオーダー。売れ筋は「もとぶ牛」の革で作った草履だ。

同社では「もとぶ牛」一頭分の皮をまるごと購入し、腐らないよう塩漬けにして県外のなめし工場へ送り、色の指定をする。また、本部町伊豆味の琉球藍を使って染める作業は自分たちで行う。手間暇、コストがかかるため、決して安い商品ではないが「革ぞうりは修理もでき、5年、10年と長く履き続けることができる」という。

池田さんは革ぞうりの耐久性を確認しようと、「革ぞうり」を履いてフルマラソンに挑戦した。中学から大学まで続けていたラグビーの先輩に「おまえ、草履屋だったら草履で走れ」と言われたことがきっかけだ。冗談だったようだが「それもそうやな」と「革ぞうり」を履いてNAHAマラソンを2回、ホノルルとロサンゼルスマラソンを1回ずつ、いずれも完走。「フルマラソンをしても壊れない草履」であることを自ら証明した。

この革ぞうりでフルマラソンに参加した

思い出を形に変えて

「ランドセルリメイク」のサンプル

「ランドセルリメイク」にも力を入れる同社には、使わなくなったランドセルが全国から送られてくる。中でも名刺入れを作ってほしいという要望が多く、大人になって名刺交換をする際の話題のネタになると評判だ。

また、ランドセルを買ってくれた祖父母などに「無事、卒業しました」と感謝の気持ちを添えてちょっとしたリメーク小物を贈れば、思い出を形に変えたいいプレゼントになるだろう。


池田さんに今後の目標を尋ねると、「30年は商売を続けたい。たとえば、親に革ぞうりを買ってもらった子どもが大人になって、今度は自分の子どもの革ぞうりを買いにきた、というのが理想です。よそから来た僕だけど、この本部の地で老舗といわれるまでは頑張りたい」と先を見据えた。

(﨑山裕子)


プチ島ぞうりキーホルダー(1,000円~)

株式会社 革人

沖縄県国頭郡本部町山川351-1
Tel 0980-48-2515

info@kawanchu.com

http://www.kawanchu.com

(2021年8月19日付 週刊レキオ掲載)