「豚マニア」の双子姉妹が手がける栄養満点のアンダガシー


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アンダカシーで豚の文化と歴史伝える

 

揚げたてのアンダカシーと商品を手に持つ新垣麻依子さん(左)と國場麻梨江さん=うるま市川崎の「龍華」 写真・村山望

豚の皮と背脂をラードで揚げた「アンダカシー」。近年では、その栄養価が注目されている沖縄生まれの商品を製造しているのがうるま市川崎にあるアンダカシー専門店「龍華」だ。昔ながらの製法を守りつつ、独自の製法でサクサクとした食感を実現。アンダカシーや豚肉文化の普及に努める同店に話を聞いた。

アンダカシー(油かす)は「豚は鳴き声以外は全て食べる」といわれる沖縄の伝統食品。現在専門に作っているのは県内で2店のみだという。その一つ「龍華」は、創業前から研究・改善を重ね続け約10年。商品の普及に取り組むのが代表の新垣麻依子さん(37)と双子の妹で営業担当の國場麻梨江さん(37)。「豚マニア」というバイタリティーあふれる2人だ。

「龍華」のアンダカシーはサクサク、カリカリとした食感が特徴。無添加・地産地消にこだわり、県産豚を100パーセント使用している。年配者にはなつかしい存在だが、その食感に驚く人が多いという。

無添加にこだわったうま塩味とプレーン味(無塩)に加え、島こしょうチーズ味、タコス味、七味マヨ味も販売。スナックやおつまみとしても楽しめる

「昔のアンダカシーは硬くて油っこく、料理やみそ汁に入れたりするような存在。昔と同じ製法でも、食べやすくて脂がうまく抜けてうまみを味わえるところまで実現できた」と姉の麻依子さんは話す。

商品を開発したのは2人の母、國場真千代さん。惣菜店を営んでいた時、精肉店に積み重なっている背脂を目にしたのがきっかけだった。破棄されると聞き、アンダカシー好きの真千代さんは自分で作ってみようと考えた。何度も失敗を繰り返し、ついに理想の食感を生み出すことに成功。2013年に「龍華」を創業した。

昨年、娘の麻依子さんが2代目代表に就任し、工場で現場を管理。双子の妹、麻梨江さんはインターネットやイベント、取扱店での試食販売などを通しての情報発信を担う。

戦後の歴史が原動力に

2人の原動力となっているのは豚の歴史だという。1948年、戦後の食糧難に苦しむ沖縄に、ハワイに移住した県系人から550頭の豚が船で届けられたという史実だ。

「どうやって売っていけばいいか分からなくて、インターネットで『おきなわ、豚、歴史』を検索してその歴史を知った。心臓が震えたのと同時に涙が止まらなくなった。商品を通して豚の歴史を伝えていきたい」と麻梨江さん。

「機雷などが海に浮かぶ中、7人の勇士が命懸けで運んでくれた。その思いに感動して鳥肌が立った。歴史を知って頑張ってこられた」と麻依子さんも思いを語る。

肉、卵、チーズを主食とし、体質改善を図る「MEC食」を提唱する沖縄徳洲会こくらクリニックの渡辺信幸院長との出会いも後押しした。麻梨江さんがYouTubeなどでPR活動を始めた当時「『アンダカシーは沖縄の健康長寿の鍵だから頑張ってください』と先生からフェイスブックにメッセージが届いた」。以来、共に情報発信するなど交流を続けているという。

工場から顔を出す麻依子さんと母の真千代さん(左)。真千代さんは今も現場で製造を続けている

栄養価に県外からも注目

コラーゲンの塊でもある豚の皮をメーンに使ったアンダカシーは糖質ゼロでタンパク質が豊富、良質な脂も取れることから、栄養価が見直されている。メディアなどでも取り上げられ、県外や国外からも注文が入るようになった。筋肉を落とさず減量することが必要なプロボクサーにも愛用されている。

昔ながらの製法で揚げる。シンメー鍋で豚皮などを熱するうちに、ラードが浮いてきて自分の脂で揚がっていくという

実は、創業時、膠原(こうげん)病を患い入退院を繰り返していた麻梨江さんは、初めはアンダカシーが好きではなかったが、摂取するようになると、体調が改善したという。

「豚は健康に良いと知ってもらい、豚のイメージを覆したい。私たちは豚に感謝しながらおいしく作るのが使命。県知事賞も目指したい」と麻依子さんはほほ笑む。

ラードを使用した「沖縄ラードソープ550」や「無添加純正ラード ブタのしずく」も開発

「私も豚で命が救われた一人。当時のウチナンチュの皆さんや豚への恩返し、そして未来の人たちに豚の文化を残していくという„恩送り“をしたい」と麻梨江さんも続ける。

「県民に愛される商品にしたい」と意気込む2人。お互いに切磋琢磨しながら、豚肉文化を伝えていこうと協力している。

(坂本永通子)


アンダカシー専門店「龍華」

沖縄県うるま市川崎239-1
TEL 098-989-4583

https://www.anndakashi.com
通販サイト https://tsuku2.jp/ryuka
 

(2021年9月9日付 週刊レキオ掲載)