利用者のメンタルヘルスを見て見ぬふりをするSNS企業の闇? モバプリの知っ得![150]


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SNS大手のFacebook社で働いていたフランシス・ホーゲンさんが内部資料を入手して内部告発を行いました。「企業は利用者の安全より会社の利益を優先している」と批判しています。ホーゲンさんは、「体形に不満を持っている10代の女の子の32%は、インスタグラムを見ると気分が落ち込む」いった情報を持っていながら、企業として対策を取ってこなかったというのです。

Facebook側は反論していますが、こうした利用者のメンタルに関する問題点は以前から指摘されていました。会社側は知っていたのに見て見ぬふりをしていたとなれば「たくさん儲けるためにユーザーのメンタルヘルスやストレスを儲ける材料にしていた」ということで、問題がさらに大きくなるでしょう。

見た目や外見、体形だけで人を評価することを「ルッキズム(容姿至上主義)」と呼びます。若者向けSNSとルッキズムの相性は良く、「かわいい・かっこいい」とされている人たちに人気が集まり、憧れを持ってしまう構造です。SNS企業は広告しているファッションアイテムや化粧品、サプリメントなどを売るために、ルッキズムを後押しする投稿をたくさん見せているということですね。過去にはGoogleも身体的なコンプレックスを刺激して、広告を出して問題になっており、これも「受け付けないようにする」といっていながら、いまだそうした広告の撲滅には至っていません。ルッキズムを刺激する広告は、スマホの利用と表裏一体になっているのです。

「ルッキズムの呪い」に屈しない -モバプリの知っ得![122]
https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-1295181.html

同じSNSの投稿を見ていても、若い10代と大人は受ける影響が違います。10代は、「自分がどうあるべきか」といったアイデンティティを構築している多感な時期で、触れるものが違うだけで考えが変わるし、日々いろんな感情と向き合っているのです。SNSは、子どもたちからすると刺激的であると同時に傷つきやすいツールでもあります。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

「じゃあ、使わせなければいい」という声もありますが、今の10代の子たちはSNSやスマホといったツールとは切っても切れない関係にあり、逆にSNSの使い方ひとつで彼らの可能性は多いに広がることもあるのです。そういう意味では、アイデンティティを確立するために「スマホは必要」という思いがありながらも傷つきもする。僕たち大人が思っている以上にそこのさじ加減が難しいという側面があり、大人はその点も理解する必要があります。

僕たち大人からすると、「見た目なんて気にするな」と10代の子たちの悩みを切り捨てがちですが、10代からするとそんな簡単なことではないのです。難しい問題だからこそ、企業としてはそうしたルッキズムの問題に対して強く向き合わないと、今後も子どもたちが傷つき続けることになります。

SNSは楽しくて、新たな発見を得ることができるかもしれませんが、同時にルッキズム的な価値観を押し付けられ、落ち込んでしまうこともあるということです。SNSを見て落ち込むのは、みなさんが人と比べて劣っているからではありません。そうした構造になっていて、企業側も儲けるために放置している可能性があるのです。正直こうした構造は、個人の努力で解決できる類のものではありません。深く陥らないために、いち利用者として企業が利用者のメンタルヘルスを逆手にとって利用していないか、適切に対応しているかなど彼らの態度を注意深く見ていく必要があります。それを踏まえ、「SNSを使う時間を決める」「落ち込んでいる時だからこそSNSを見ない」などのルールを作って使用してみてください。

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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