子どもたちの未来をつなぐタコライス【島ネタCHOSA班】


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ラジオで「タコライスラバーズ」のことを知りました。私にも何かお手伝いできることがあればと考えています。活動について詳しく知りたいです。

(沖縄市 O川さん)

「タコライスラバーズ」ですか。ネットで検索してみると、子どもの貧困解決を目指し、小学生以下の子どもにタコライスを無償提供している一般社団法人と判明しました。さっそく調査開始です。

やってきたのは、那覇市泉崎にあるタコライスラバーズの事務局。代表の山川宗德(やまがわむねのり)さんが迎えてくれました。

山川さんは、タコライス発祥の町・金武町出身。もちろん大のタコライス好きです。昨年3月に16年勤務した県警を退職した元警察官で、公務員の退職者で構成される「県退職公務員連盟」の事務局長なども務めています。

子どもに無料チケット

代表の山川宗德さん

「タコライスラバーズ」は元々2019年8月に山川さんが立ち上げたフェイスブックの公開グループの名称。「タコライス好きが投稿する趣味のグループでした」。約半年後、ある勉強会に参加した山川さんに転機が訪れます。奈良県橿原(かしはら)市にある「げんきカレー」が始めた子どもに食事を無償提供する「みらいチケット」の取り組みを知り、「沖縄で行ったら絶対いいと思い、グループ内で『みらいチケット』を普及していこうという発想が生まれました」と振り返ります。

その後、県内41市町村に協力店を広げたいと、クラウドファンディングで支援を募り、集まった約320万円で各店に設置する資材などを購入。32店舗が加盟し、昨年12月にスタートしました。

「みらいチケット」の仕組みはこう。大人が食事した際にプラス料金(通常200~300円以下)でチケットを購入し、店内の掲示板に張ります。おなかが空いた子どもはそのチケットを利用し、食事ができるのです。

「目的は貧困から派生する非行を止めること」と話す山川さん。それは自身の経験が基になっているといいます。決して裕福ではなかった子ども時代、共働きの両親が用意した夕食では足りない時、兄と近所のパーラーでタコライスを買うと、店の人がサービスしてくれ、温かく接してくれたそうです。警察官時代は、貧困が理由で空腹を満たすために万引き行為をする子どもたちを数多く見てきました。

「受けた愛情を次の世代に引き継いでいける大人になってほしい」と願う山川さん。いずれ子どもたちが大人たちの愛情に気付いて、支援する側に回っていってくれたらと思っていたそうですが、すでに子どもたちにその思いは伝わっていると知ったそうです。「お店の片付けなどの手伝い、皿洗い、テーブル拭きなども率先してやっているようです。協力店との人間関係が構築でき、新たな居場所にもなっています」と語ります。

県内の全校区に協力店を

これまでに1万食以上を提供してきたタコライスラバーズ。現在、協力店は63店舗に増えました(11月12日現在)。山川さん一人で始めたタコライスラバーズも、活動を知り多くの人が広報や営業面などでの協力を申し出てくれたといいます。

今年中に那覇市立小学校全36の校区にひも付く協力店の確保を目指しているという山川さん。来年5月の日本復帰の日までには、県内の250校以上ある全小学校の校区内での協力店の確保を目標としています。

県退職公務員連盟の事務局長でもある山川さんは、退職した元職員の豊富な経験を生かして子どもたちの学習支援もできればと考えているといい、食に加え教育でも沖縄の負の連鎖を断ち切りたいと将来を見据えます。

おなかを満たしてくれるだけではなく心も豊かにしてくれるタコライスラバーズの活動。優しさの輪が広がっていけばいいなと思った調査員でした。

協力店の掲示板に張られた「みらいチケット」。チケットを購入した大人や利用した子どもからのメッセージも
協力店に掲げられるのぼり。協力店などの情報はHPで確認できます(写真はすべて山川さん提供)

タコライスラバーズ

那覇市泉崎2-3-3 オフィス泉崎2-A
電話:080-2697-1226
https://www.tacorice-lovers.okinawa/

 

(2021年11月11日 週刊レキオ掲載)