不思議な街コザに魅了された人々がつづる それぞれのストーリー〈2nd〉
「実在する不思議な街・沖縄市コザを舞台にした映画!」と銘打った2022年公開予定の映画「10ROOMS」がコザで撮影されています。確かにコザは不思議な魅力を持った街。しかし、その魅力の対象は人それぞれ違います。このコラムは、4つの物語で構成された「10ROOMS」にちなんで、コザの不思議な魅力を4人の筆者それぞれの視点で紹介するリレーコラムです。第二回目は海の環境保全活動の一環として「サンゴに優しい日焼け止め」を開発・発売しているジーエルイー合同会社代表の、金城由希乃さんです。
1、高校一年生の春の昼下がり、友人と中央パークアベニューで立ち話ししていたら、全身ボンデージルックの鋭い化粧をした青いウェービーなヘアスタイルの女性が通りかかった。「一体誰なんだ?」と友人と顔を見合わせ尾行した。「クラブ キングダム」。確かそういう名前だったかも。ドアの外で中に入って素性を聞くかどうか迷っている私たちに中から「あんたたち!ついてきているのはわかってるわよ、中に入ってきなさい」と…。それから逃げたのか、中に入って喋ったのは覚えていない。ただただ彼女の持つ不思議な魅力に尾行せずにはいられなかった、思春期の私たちだった。
2、中央パークアベニューを出て国道330号線に差し掛かるところで、おばあに話しかけられた。「今日は何曜日ね?」と。おばあは答えを聞くと立ち去っていった。
3、つまみを飲み屋に持っていって販売する通称「売り子」のバイトをしていた18歳の夏。あるお店のドアを開くと、お姉さんがお客さんに馬乗りになって「イーハー!」とはしゃいでいた。大人のドアを開いた気分だった。
4、そのバイトをしていた時に、とある飲み屋で小さい時に一緒に日曜礼拝に行っていた年下の幼馴染がママとして働いていた。17歳の彼女は、おじいに胸を擦り付けて、久しぶりに再会した私のために「たこ焼き買ってあげて~」とねだった。私は次の日、バイトをやめた。
5、図書館の前で、全身緑の服を着たティンカーベルのようなお姉さんに話しかけられた。「あなた、この服似合っているわ!」と。お姉さんはそれだけ言ってご機嫌でタクシーに乗っていった。
6、けんちゃん(だったかな?)という、缶をきれいに切ったり工作して、路上で販売していた陽気なおじさんがいた。しばらくすると、けんちゃんに若い彼女ができていて、彼女は「ノーブラが世界を救う、琉球は独立するべきだ!」とノーブラで持論を解いていた。街を歩くだけで、毎日ネタみたいな人と出会えて楽しい日々だった。
7、背丈の大きな米軍人の女性と仲良くなった。彼女の口癖は「犬好き、猫好き、男好き、女好き」で、飲み会のたびにみんなに斉唱させていたけど、私だけは「女は好きじゃない」と真面目に答えていた。斉唱していた友人は、後でタッチが激しくなって襲われそうになった。ノリでも思わせぶりはいけないね。
8、ダボダボの服を着てクラブに遊びに行っていた。ダボダボの服を着ていくと、アメリカ人は「こいつはレズビアンだ」と勝手に決めつけてくれたので、安全にキャットファイトを見物する事ができた。キャットファイトはどこからともなく始まる。そこでクラッシュアイスを投げて場を盛り上げるという陳腐な遊びをしていた。女性たちのキラキラした派手な服装も楽しかった。
9、同級生との再会
・アメリカ人の彼氏からひどいDVで青あざだらけでも全然別れない同級生。アメリカに行きたかったのかな。幸せになっていてほしい。
・私には中学生の時に話してくれたけど、やっと世間にカミングアウトしたゲイの同級生とコザのゲイバーでの再会でほっこり。
10、コザの街でシニアと飲むのは楽しい。ある時、私の恋愛事情に花を咲かせてやんや話してくれた女性たちがいた。帰ったあとにそれを聞いていた街のダンディーが「あいつらはヴァージンで結婚したんだ、あいつらのアドバイスは役に立たないから聞くな、お前の話なんてただのツマミだ」とバッサリ。なんだかんだで愛を感じた。
書けないくらい、いろんな事があったコザでの生活。全ての登場人物が色鮮やかだった。
街を寂れていると表現する人がいるけど、私にとって、きらりと光るいろんな場所や人が点在しているから、私にとってのコザはいつもキラキラしてる。
あの場所に行って、あの人と会えたらいいな。
ネタみたいな人と今日も会えるんじゃないかな。
また友達増えたらいいな。
世間は「ダイバーシティを学ぼう」というけど、コザにいるだけで大丈夫。勝手に身につきます。それこそ、日本でもない、沖縄でもない、アメリカでもない、と言われるゆえんなんだと思う。ここにはみんなの居場所があるはず。
映画「THE 10ROOMS」で、コザの魅力を発信できること楽しみにしています!
金城由希乃(きんじょう・ゆきの)
沖縄市出身。ある時、海で使用していた日焼け止めを「サンゴが死んじゃうよ」と注意されたことをきっかけに観光と環境の問題に取り組むべく8年間経営した店舗を売却し、クラウドファンディングで集めた資金で2017年「サンゴに優しい日焼け止め」の企画販売を開始。講演活動やイベント登壇を通じて、海を守るということが自分ごととなったきっかけや、アクションの大事さなどを幅広く伝えている。
2020年から地域とビジターを繋ぐ「プロジェクトマナティ」を立ち上げ、第一弾として、いつでも気軽クリーンアップでき、地域の人と繋がるプロジェクトを始動。協力拠点が60箇所に広がり、エシカルツーリズム、地域が立ち上がる地方創生のモデル作りを実践中。
サンゴに優しい日焼け止めHP:https://www.coralisfriend.com/
プロジェクトマナティHP:https://www.manatii.org/