コーヒーの袋を再利用 老舗コーヒー専門店が手作り凧で新年をお祝い!?【島ネタCHOSA班】

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沖縄市山里のコーヒー専門店「原点」。香り高い一杯を求めて、県外からのお客さんも訪れる有名店です。店主の外間也蔵さんは、コーヒー作りに情熱を注ぐほか、凧職人としての顔も併せ持っているんですよ。外間さんが生まれた与那国島の伝統凧やオリジナルの凧についてお話を聞きました。



与那国島や石垣島に伝わるチョウ形の仕掛け凧「フータン」(シャクシメーともいう)

外間 也蔵さん

原点では毎年、新年最初の営業日に合わせ、外間さんが新しく作った凧をお披露目しています。凧の制作は、前年の10月から始めるのだとか。

2021年12月中旬、お店の定休日に外間さんを尋ねると、展示を控えた凧たちが並ぶ光景に出合いました。凧の形は実にさまざまです。八角形やセミ、チョウの形をしたものは八重山諸島伝統のもの。それだけでなく首里城正殿やピアノ、ギターの形をしたものもあります(!)。

5、6歳のころから凧作りに親しんできた外間さん。伝統的な形だけでなく自由な発想で凧を作ることにも熱心なんです。楽器型の凧などは、本当に揚がるの? と心配になりますが、お店には「実際に揚がった凧だけ飾る」と言うからさらに驚きです。

与那国の凧文化


クラシックギター(右)とバンジョー(左)の形の凧。楽器のデザインを採用したのは「安心してコンサートができる年になりますように」という願いを込めているから

1948年、与那国島に生まれた外間さん。当時、島の主な交通手段は船でした。外間さんは「島の子どもたちは凧に夢を乗せて作っていたんです」と幼い頃を思い出します。

小さな子どもがいる家庭では、お正月が近くなると親たちが夜なべして凧を作り、元日にプレゼントしていました。子どもたちは工作ができるくらい大きくなると、自分でも凧を作るようになりますが、この時作り方を手ほどきしてくれるのは近所のお兄さんたちだったそう。

子どもたちが新年に遊んだ凧は、旧暦16日まで保管されました。理由は、沖縄で「あの世の正月」とされるジュウルクニチのお墓参りで使用するため。亀甲墓の前に集まり、大人たちはお供えや歓談をしますが、その間、子どもたちは墓の上で凧揚げをしたのだとか。外間さんは「空高く揚がる凧の糸には、天の先祖と生きている人をつなぐ役割がありました」と教えてくれました。

ものづくりで交流


特大サイズ、約2メートルの飛行機凧。大きいけれどスムーズに揚がるそう

与那国を代表する凧の一つに「飛行機凧」があります。立体的な形状は、大正時代に島上空を飛んだ飛行機を初めて見た人々が作り出したと言われています。

かつて島では、飛行機凧の素材としてセメントの袋を利用することが一般的でした。セメントの袋は強度があり、丈夫な凧ができたからです。現在、外間さんが手がける際には、コーヒーの生豆が入っている袋を再利用しています。翼の部分がブラウンなのはそのためなのですね(写真参照)。また、凧の骨組みには、市販の竹ひごなどは用いず自身で竹を切り出しています。

手作りにこだわった凧は、室内に飾っても様になり、温かみのある風合いが魅力です。外間さんは凧を販売することはありませんが、心が通じ合った人には贈呈しているのだと話してくれました。そんな姿勢に共感した一人が陶芸家の大嶺實清さん。年に一度、陶芸と凧を「物々交換」していた時期があったのだとか。ものづくりを極めた二人の心の交流は今も続いているようです。

大嶺さんとの物々交換がきっかけで、外間さんの作品は世界的デザイナー、三宅一生さんの目にも留まります。2008年、東京六本木で行われた三宅さん監修の企画展『XX(10)グラム. ―21世紀人』には飛行機凧「どぅなんエンデバー号」を出展しました。「夢」「ものづくり」がテーマの展示会場から飛翔していくようなかたちで設置されたんですよ。

凧作りを通して、手作業の楽しさと継続することの大事さを伝えている外間さん。話しているとなんだか元気が湧いてきます。ぜひ原点を訪れて、2022年の夢を乗せた作品を間近でご覧ください。

「私は国頭村出身なのですが、母親が『昔は隣近所に蓄音機あったよね~』といい出したのが、はじまりです。近くの電器屋さんには蓄音機が売っていなかったから、仕事で本土に行ったときに古物店で蓄音機を購入しまして。そしたら蓄音機から流れるレコードの音に母親が涙を流して喜んで。それが私の原動力となった」とニッコリ。


首里城正殿を描いた凧も展示予定

山城さん自身もレコードの音に魅了され、口コミを主な頼りにヨーロッパやアメリカ、中国、台湾に出かけて1枚1機ずつコツコツ購入。全レコードのうち9割5分はLP登場以前のSP盤。「これね、ぜんぶ自分のおこづかい。月々の給料はすべて妻に渡しているから、それ以外のアルバイトで稼いだお金で買っているんです」とニヤリ。

「アメリカのビクターの工場にも訪問したし、国内のレコード会社が私の蓄音機を借りにきたこともあった。博物館の職員が訪ねてくることもある。レコードも蓄音機も生き物だから、1つ1つ個性が違う。私もあんないい音(声)が出したいと、合唱団に入ったこともあった(笑)。レコードがなかったら、私はもっと堅物の人間で終わっていたと思う。レコードがコミュニケーションの潤滑油になってくれた。私の所有するものを丸ごと誰かに譲りたい。誰か買わないかなぁ。博物館ができますよ」と山城さん。

1つの趣味がこんなにも人の人生を大きくつなげていくんだなぁ、と感動した調査員でした。


 


原点
沖縄市山里2-9-31
営業時間 10時~18時
定休日 日曜日
※新年の営業は4日(火)から。凧の展示は2月末まで
 


(2021年12月30日 週刊レキオ掲載)




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