地元愛あふれるパン職人手作り! 世界遺産で買える「国王の食パン」【島ネタCHOSA班】


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

琉球王家最大の別邸・識名園でしか購入できない「おいしいパン」があるらしい、といううわさを耳にしました。詳しく教えてください。

(浦添市 ジャム&バター)

世界遺産として登録される識名園で、本当にパンが買えるのでしょうか!? 格式の高そうな依頼に、調査員は気を引き締めて識名園へ向かいました。

識名園の名物に

識名園の入り口を目指して歩いていると、右側に「王朝食パン 識名園」と書かれたのぼりを発見! どうやらこの売店でパンを売っていそうです。期待しながら中に入ります。

識名園入り口、券売所の手前が店舗

まるで海外のパン屋さんのようなおしゃれな店内。レジの後方に、ずらりと並ぶ食パンが見えました。このパンに違いないと思いつつ、まずはどういうお店なのかお店の人に話を聞きました。答えてくれたのは、おいしいパンと洋菓子で知られる人気店「いまいパン」のオーナー・今井陽介さん。

「ここは私たちと真地自治会が協同で運営しているパン屋です。パン職人の私とパティシエの妻は、10年前に妻の実家に近い真地で開業しました。妻は、識名園の売店を地域活性化に活用できるといいとイメージしていたんです。そんな思いから那覇市の識名園売店の公募に応募し、選定され真地自治会の協力も得てこの場所での開店につながりました」と語る今井さん。

奥さまの地元愛が形になったのですね! 実はお土産ショップを計画していたそうですが、コロナ禍で県外観光客の訪問が見込めない現状に。相談を重ねた結果「県内の人に喜んでもらえる、高級食パンを販売しよう」と決定し、2021年3月にオープンしました。

笑顔で迎えてくれた「いまいパン」オーナーの今井陽介さん(左)とスタッフさん

「意外にも識名園はお土産がなく、14年に焼き菓子『識名園 るうまんぺい』を作りました。次は沖縄の宝のような場所にふさわしい、パンを作ろうと決意しました」と今井さん。

そして誕生したのが「国王の食パン」です。厳選した小麦粉や純生クリーム、自家製甘麹ほか材料にこだわっています。甘酒の素になる甘麹ですが、那覇市国場にある「仲宗根糀家」の米麴を今井さんが培養。甘麹にして使っているそうです。上品な甘みが「国王の食パン」の優しい味の決め手となり、もっちりフワフワな食感とマッチします。試食しましたが、初めて食べる高級パンの奥深さに感動、沖縄が誇る世界遺産の風格にふさわしい味でした。卵は不使用で、アレルギーのある方でも食べられ安心です。

那覇市長賞・優秀賞に

材料選びをはじめ製法にもこだわり、地域への思いがあふれる「国王の食パン」。何と先月、那覇市長賞・優秀賞を受賞! おめでたいですね。「いまいパン」の洋菓子は数々の賞を受賞してきましたが、今回の受賞は今井さんにとってひときわうれしかったそう。那覇市政100周年の記念イヤーの受賞でもあり、特別感があったといいます。地元を思う奥さまの気持ち、パン作りにかける今井さんやスタッフのこだわり、さらに真地自治会のパートナーシップなどが「国王の食パン」の受賞につながったのでしょうね。

山型で王冠のような形の「国王の食パン」

「ポリシーは体に良いものを作ること。甘さや塩分控えめのパンを作っているので、開業当初は売れませんでしたが、10年続けてリピーターがついてくださっていると気付きました。来店してくださるみなさまに感謝です」と笑顔の今井さん。「国王の食パン」も長く愛される名物になると思います。

琉球王朝のいぶきを感じる識名園で販売中の高級食パン。ふっくらとした形が冠に見えて、琉球の国王が口にしたら「うまい! と気に入ってくれるのでは」と楽しい想像をしながら、帰路に就いた調査員でした。


識名公園売店(王朝食パン 識名園)

沖縄県那覇市真地421-7 識名園券売所横

TEL 098-961-3233

定休日:水曜日
営業時間:10月~3月 10時~17時 4月~9月 10時~17時30分
(売り切れ次第、閉店の場合あり)

(2022年3月3日 週刊レキオ掲載)