ロシア料理店への嫌がらせ相次ぐ 身近なところから生まれる“ヘイトクライム” モバプリの知っ得[170]


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先月24日、ロシア軍がウクライナへ侵攻し戦争状態になっています。毎日ニュースとして報じられ、ロシア政府を非難する声や、ウクライナを応援する声も多く集まっています。そうした状況の中、残念なことに日本国内のロシア関連のお店への嫌がらせも多数報告されています。

誹ぼう中傷・侮辱的な書き込みや、理不尽な低評価、さらに東京都内のロシア食品店では看板が破壊されるなどの被害も出ています。中でも「お店の口コミを荒らす」という嫌がらせは近年ネット上でよく見られる光景です。こうした行為は、業務妨害や侮辱罪になる可能性があり、行うべき行為ではありません。

https://ryukyushimpo.jp/style/article/entry-1454114.html
正月特番の大炎上から考える やまないインターネット上の誹謗中傷 モバプリの知っ得[161]
 

「ロシア政府」に対する批判は理解できますが、「ロシア関連のお店」「在日ロシア人」の人たちに嫌がらせ行為をすることは的外れもいいところです。「適当に理由をつけて敵と見なした人を攻撃する」という姿勢の延長線上に侵攻や戦争が発生するのだと思います。

人種や民族、宗教など、特定の属性の人たちをひとくくりにした偏見や憎悪が元で発生する事件を「ヘイトクライム」※1と呼びます。今回のロシア関連のお店への誹ぼう中傷・破壊行為もヘイトクライムの一種です。悲しいことに、ヘイトクライムは私たちの社会のいたる所で見られ、ターゲットになりやすい属性の人は怯えて暮らすことになってしまいます。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

「◯◯人はこんな性格である」という思い込みが偏見を生み、エスカレートしていくことでヘイトクライムへとつながります。いわゆるステレオタイプのようなものでも、少しずつ積み重なって偏見を生み出すことになるのです。そうした偏見が「〇〇人は怖い」「悪いことをしてそう」「危険じゃないか」というような憎悪感情から、ヘイトスピーチやクライムになり、歴史的に見ると最悪の場合はジェノサイドにつながることもあり得ます。

メディアやコンテンツは、そうしたステレオタイプを面白がったり、主語を大きくして娯楽として消化しがちですが、敏感に注意を払わないとエスカレートしてヘイトクライムの種になることもあり得ます。特にSNSでは自分と近い考えの人たちで交流しやすくなる仕組みがあるため、特定の属性の人たちへの偏見が高まりやすくなっています。「無関係なロシアのお店が攻撃されていてかわいそうだ」と思った方は、同じようなヘイトクライムが近くで発生していないか、あるいは目にしたことはないか、そして自分の中に偏見などのヘイトクライムの「種」がないのか今一度考える機会にしましょう。

※1ヘイトクライム…新型コロナウィルスが世界で流行しはじめた2020年、欧米ではアジア人に対するヘイトクライムが多数発生しました。日本においても、北朝鮮がミサイルを発射したり、韓国との関係が悪くなると差別的な書き込みがネット上にあふれ、在日コリアンに対するヘイトクライムが発生するなどしています。

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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