侮辱罪の厳罰化 モバプリの知っ得[173]


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政府は先月8日、「侮辱罪」の罪の重さを引き上げる改正案を決定し、今の国会成立を目指す方針です。2020年、SNSの誹謗中傷によりプロレスラー木村花さんが自ら命を絶ってしまう悲しい事件が起きました。母親の木村響子さんは、娘の花さんを誹謗中傷していた中から二人の男性を特定し侮辱罪で訴えましたが、結果は科料(※罰金より軽い)9,000円でした。それだけ侮辱罪の扱いが軽く、その結果今回の法改正への流れとなっています。

誹謗中傷に対して今までは罰則規定がありましたが、ネット上での誹謗中傷は誰がやったのか分からない状況があったので、それを特定する手続きをしやすくしようという動きが出ていました。

この2年を振り返ると、誹謗中傷の書き込みをしないための働きかけや書き込みがあった場合のプロバイダーなどによる削除対処、発信者情報開示請求権の取り組みなど、わりあい厳しい方向に動いています。ただ、この大きな流れ自体がどういう形の法律へと展開していくのかは気を付けて見ていく必要があります。

侮辱や名誉毀損の抑止のために罪を重くすることに賛成する人は多いと思いますが、それを逆手にとって、政治家や力のある人たちが自分たちへの「批判」を「侮辱罪」として訴える可能性があることには注意が必要です。他人を脅迫して萎縮させるためにお金や権力を利用して裁判を起こすことを「スラップ訴訟」と呼びますが、法改正によってスラップ訴訟が簡単に行えるようになるかもしれません。そうなると、今度は私たちの言論の自由が奪われます。非常に難しいバランスの法律です。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

同じ言葉でも、相手との関係性や前後の文脈によって意味や受け止め方は大きく変化します。自分に悪気がなかったとしても、相手を傷つけたり侮辱になったりする可能性を秘めています。また、SNSやLINEなどの「文字でのやり取り」は言葉が足りなかったり、入力間違いなどで違う意味で伝わったりするリスクもあります。単語一つの選び方や絵文字を付けるなどで雰囲気を伝えるなど試行錯誤も必要でしょう。誰もが人を傷つける可能性があります。投稿・送信前に言葉の使い方に問題がないか、念をおして確認してみましょう。

解説 侮辱罪…「侮辱(ぶじょく)」とは相手を見下し、はずかしい思いをさせる言動のことです。おおやけの場所で事実を指摘せずに相手を侮辱すると「侮辱罪」になるわけですが、改正されることで「1年以下の懲役・禁錮、または30万円以下の罰金」となります。(なお、具体的な事実を指摘した上で相手の名誉を傷つけると侮辱罪ではなく「名誉毀損罪」の対象となります)

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

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【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

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