被害者バッシング モバプリの知っ得[175]


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

2019年4月に起きた池袋自動車事故の被害者家族、松永拓也さんへ誹謗中傷・侮辱的な書き込みを行ったとして、先月警視庁は愛知県に住む20代の男性から任意で事情を聴き、今後書類送検する方針であることが報じられました。被害者・被害者の家族に対し誹謗中傷・侮辱、バッシングする行為は、ネットの世界でよく目にします。事件事故で苦しんでいる方を再び傷つける、非常に許しがたい行為です。

こうした話題の時に、「なぜ人は被害者をバッシングするのか」の要因として考えられるのが「公正世界仮説」という考え方です。これは、「良い人には良いことが起きる」「悪い人には悪いことが起きる」といった「世界は公正に動いている」と考えることです。

この公正世界仮説は「悪いことが起きたのは、悪い人だったからだ」と被害者をバッシングする考えにたどり着いてしまうことがあります(実際、世の中はそんなに単純ではなく、自分がどうであれ良いこと・悪いことは起こり得ます)。

被害者バッシングをする全ての人が公正世界仮説によるのではないでしょうが、この言葉を知っておくことで、自分が被害者を責めようとしたときのブレーキになるのではないでしょうか。

今やSNSで誰もが「ニュースコメンテーター」になれる時代です。戦時中の独裁国家などでは、自分の意見が自由に言えないため、自由に発信できることそのものはとても素晴らしいことです。しかしその一方、デマ・フェイクニュース、誹謗中傷・侮辱、そして被害者バッシングなどの問題もたくさん出てきています。

SNSに気軽にニュースコメントに投稿することで、被害当事者へ届く可能性もあるため、発信の方法をしっかり考える必要があります。

イラスト・小谷茶(こたにてぃー)

一方で加害者やその家族へのバッシングもひどいものがあります。池袋の自動車事故でも、運転していた男性の家族にも誹謗中傷や根も葉もない不確かな情報が書かれました。被害者バッシングをしないことは大前提ですが、加害者も過度にバッシングしないということも心に留めておかなければなりません。

さらにはネットユーザーだけではありません。メディアの側も見出しや内容で被害者にバッシングを行くような形だったり、コメント欄を設置して誹謗中傷が広がっていても対処しなかったりというところもあります。メディア側も報道として伝えるべきことは伝える中で、そこで被害者や関係者に刃が飛んでいかないような仕組みも必要ではないでしょうか。

解説 池袋自動車事故…東京の池袋で87歳の男性がブレーキとアクセルを踏み間違って暴走運転をし、母親と3歳の子どもが亡くなってしまいました。この事故をうけ、高齢者の自動車の運転について社会の中で大きな議論となりました。この事故で妻と子どもを亡くした松永拓也さんは、事故による被害者が少しでも減る世の中になるよう、顔と名前を出して様々な情報を発信しています。

 

 琉球新報が毎週日曜日に発行している小中学生新聞「りゅうPON!」でも同じテーマを子ども向けに書いています。

 親子でりゅうPON!と琉球新報style、2つ合わせて、ネット・スマホとの付き合い方を考えるきっかけになればうれしいです。

【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ 沖縄を中心に、ライター・講師・ラジオパーソナリティーとして活動中。特定メーカーにとらわれることなく、スマートフォンやデジタルガジェットを愛用する。親しみやすいキャラクターと分かりやすい説明で、幅広い世代へと情報を伝える。

http://smartphoneokoku.net/