あふれるアイデアをカタチに 木工職人の玉城正昌さん(工房・たまき)


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大工技術生かし木工職人に

「工房・たまき」の店舗内に立つ玉城さん。左にあるのは彫刻作品「次の、子供たちへ」=糸満市真栄里の「工房・たまき」 写真・村山望

子ども用のおもちゃから実寸大のバイク、さらには機織り機に至るまで、さまざまな木製品を製作する木工職人の玉城正昌さん(70)。40年の大工経験で培ってきた技術やノウハウを生かして製作に励んでいる。研究熱心で好奇心旺盛。道具も自分で作ってしまうという玉城さん。繊細な職人技が光る商品で、人々を魅了する。

糸満市真栄里にある「工房・たまき」の店舗前に展示されているのは原寸大の木製ハーレーダビッドソン。2014年の沖展で奨励賞を受賞した作品だ。木工職人の玉城正昌さんが複雑な構造のエンジンからナンバープレートに至るまでさまざまな色や質の木を組み合わせて再現。タイヤやブレーキレバーなども実際に動くから驚きだ。ハーレーダビッドソンの愛好家グループが実際見に来た時に発した言葉は「そこまでやるか!」。とことんリアリティを追求した玉城さんにとって何よりの褒め言葉だったに違いない。

元大工職人で、建築会社「玉城建設」を営んでいた玉城さん。引退後に木工職人に転身した。「大工歴40年で培った技術があり、木に関しては十分熟知している。体力的にも継続できると思った」と振り返る。2008年に「工房・たまき」を設立。大工時代の工場を使い、おもちゃや雑貨、家具などを作り続けている。

ざるを使って手作りした木工旋盤。壊れた家電などを使ってできた道具は作業所の半数以上を占める

道具がなければ自分で作る

木工職人としての原点は初孫に作った木製の車のおもちゃだ。タイヤを転がすための軸がずれてしまい苦戦した。「長年大工をやっていたプロがタイヤを作れないなんて」と悔しい思いをした玉城さんは、技術を学びに県工芸振興センターに指導を仰いだ。そこで出合ったのが木材を回転させ丸く削る木工旋盤。玉城さんは木工旋盤を自作し、そこから作品は進化していった。

木のおもちゃやの他、雑貨や家具なども製作

「持っている道具では(作品は)作れない。ならその道具を作ろう」というのが玉城さん流。旋盤の他、材料に穴を開けるためのボール盤など、さまざまなアイデア道具が工場に並ぶ。洗濯機のモーターや使用済みの車のバッテリー、水切り用のザルなど、身近にあるものを使って新しい道具を生み出していった。

工房を始める1年前から機織り機の製作・修理も行っている。首里織の織り手だった義兄の提案がきっかけだった。木を知り尽くしている玉城さんは、作るうちに機織りの仕組みが見えてきたという。機織り機が完成すると自ら営業に赴き、実際に職人たちに試してもらうなど地道に活動をし、口コミで評判が広まるように。今では仕事のほとんどは機織り機関連が占めているという。

仕事の合間を縫って1年4カ月かけて製作したという木製のバイク。
複雑なエンジンも再現した

織り機の製作・修理も

織り手ごとに対応した調整は、職人の腕の見せどころだ。

「同じ道具でも一人一人が持っている癖や織り具合は微妙に違う。いかに使いやすくするかを、常に考えている」と話す。玉城さんは沖縄が誇る伝統工芸の芭蕉布や首里織、知花花織、久米島紬(つむぎ)などの織り手を道具を通してサポートし続けている。

織り機に使う経糸(たていと)を巻きとる「経巻台(たてまきだい)」

今年2月からは、県立芸術大学で織りを学んだ奥原和幸さん(24)が玉城さんの元で、機織り機の製作を学んでいる。「若い人たちにつなげることを考える立場にあるのかなと思っていたときに彼が来た。次につなげられたらうれしい」と話す。

人の役に立てることがやりがいだ。「作ったもので喜んでもらうと、力もわくし、また喜ぶ顔が見たいがために何かしてあげたいと思う。一人一人に対して自分に何ができるか、これからも追求していきたい」とほほ笑む。

木のおもちゃやの他、雑貨や家具なども製作

「平日は仕事で工場に、土日は趣味で工場に」行くという玉城さん。今後も持ち前の好奇心と追及心でものづくりに励んでいく。

(坂本永通子)


工房・たまき

沖縄県糸満市真栄里2046-3
営業時間=10:00~17:00
定休日=日曜・祝日

TEL 090-1085-3741
http://www.kobo-tamaki.com/

(2022年5月12日付 週刊レキオ掲載)